映画観てきた:戦争映画の価値に忠実な『1917 命をかけた伝令』は劇場でこそ見たい傑作

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ぜひ音質の良い劇場で

『全編ワンカット』

……という売り文句は誤解を招く。

実際には『全編がワンカット撮影のように見える』である。もちろん、全編を1カットとして撮るというドミノ倒しのような緊張感が問題なのではなく(『カメラを止めるな』はどちらかといえばこちら側)、戦場にいるかのような視点で、1シーンがそれぞれひと続きで撮影され、それぞれのシーンさえ切れ目がないかように物語が進んでいくことが緊張感を高める。

『臨場感』が重要なので、IMAXのような臨場感あるサウンドの映画館で見ることをお勧めする。もちろん、自宅のテレビ画面で見るより、映画館のスクリーンで、集中して見るべき映画だ。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画観てきた:『パラサイト——半地下の家族』の半地下も、全地下もぜんぶ防空壕

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2019〜2020年、世界で最も評価された映画

カンヌ映画祭のパルムドール受賞。アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門で受賞。双方の最高賞を受賞した作品は65年ぶり。2019年から2020年にかけてのあらゆる映画賞を総なめにしたといえるだろう。

韓国映画で、監督はポン・ジュノ。

韓国の人口の1.9%といわれる半地下の家に住む貧困家庭が、IT長者として成功した男の幸せな家庭に侵食していく様子を描く。


実際、傑作だと思う。好きか嫌いかといえば、あまり好きではないが。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画観てきた:『フォードvsフェラーリ』は、クルマ好きの古臭い男は絶対見るべき傑作

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クラシカルなテーマを現代的な映像で

タイトルに関しては異論のある人が多いとは思うが、それを差し引いても『フォードvsフェラーリ』は傑作だと思う。私としては、まだ始まったばかりの2020年だが、そのベスト映画の候補に入れたいと思っている。

’60年代という時代背景。ヨーロッパに対するというアメリカというコントラスト。挑戦する男達。組織と個人。大量生産と職人による手工業。マーケットインする男と職人肌。貧乏人と金持ち。挫折と栄光。あらゆるコントラストが鮮やかに描かれている。実にクラシカルな映画らしい映画だが、現代的な映像の美しさをもって描かれているところが素晴しい。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画観てきた:反省できるところがアメリカの美点?『アナと雪の女王2』の裏テーマ

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大人の観賞に耐える映画

日本ではステマ騒ぎでそれどころではなくなった感があるが、なかなかの佳作だ。

最近の映画業界は『財布のヒモを握っているのは親』であることに十分配慮するようになっており、内容は十分に大人の観賞に耐える映画になっている。ディズニープリンセスの登場する子供向きアニメだから内容が子供っぽい……ということは最近はなくなっている。

(ちなみに、アナとエルザは公式なディズニープリンセスには含まれていないが、含まれることもある。映画『シュガーラッシュオンライン』では、ディズニープリンセスとして登場していた)。

ちなみに前作の『アナと雪の女王』の時代から劇中でも3年が経っており、エルサは24歳。アナは21歳。前作はエルサが21歳になって王国の責任を担う存在になる場面だったが、今作はアナの戴冠の物語でもあるわけだ。物語設定上の年令だけでなく、『絵』としても、ふたりともたいぶ大人になった感じで描かれる。

映画を大人の観賞にも耐えるということには、米ディズニーの方が意識的なようで、原題は『Frozen 2』とシンプルなものになっている。邦題の『アナと雪の女王2』(以下『アナ雪2』と表記)の方が、だいぶ子供にも分かりやすくなっている。

その影響は予告トレーラーにも現れており、日本語版の方がより分かりやすく子供向きで分かりやすい感じ。

英語版の予告の方が、より主題を正確に捉えていて大人向き。

しかし、内包されているテーマ性の高さが、よりこの映画を大人が考えて観賞するのに相応しいものにしている。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画観てきた:42年の旅が完結したことに満足『スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

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42年に渡る旅が終わったことに感激

ネタバレ戒厳令が敷かれたエピソード9だが、そろそろ話題にしてもいいだろうか?(笑)

エピソード9に関しては毀誉褒貶いろいろあるだろうが、まずは42年に渡る物語が完結まで辿り着いたことをことほぎたい。

私は、全作公開時に映画館で見ているが、9歳でエピソード4を観た私に『おまえは41年後に、この映画の完結を見るのだぞ』と教えてやりたい。

私は長い物語が好きなのだが、小説のグイン・サーガは30年を経て130巻で著者の栗本薫が死んでしまうし、ファイブスターストーリーズは33年を経てまだわずか15巻までしか発行されていない。大作映画が9作に渡って、42年間に渡って同じ世界観の中において製作されるなんて奇跡のようなことだと思う。

それだけでも、本当に嬉しい。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画観てきた:反則スレスレ……だけど感動的な名シーン『イエスタデイ』

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世界中の誰もが知ってるビートルズのことを、突然誰も知らない……とうい世界線に迷い込んだ主人公の話。

主人公のジャックは、幼なじみのエリーに献身的にサポートされる売れないシンガー・ソングライター。しかし、彼はまったく売れず、エリーに捨てゼリフを吐いて、ひとり自転車で帰る。

と、その時、世界的に12秒間の大停電が起き、その瞬間に交通事故にあった、ジャックは『ビートルズ』(と、オアシスと、コカコーラと、タバコと、ハリーポッター)のない世界線に迷い込んでしまう。

彼が、演奏するビートルズの曲に驚く人たちに味をしめて、ジャックはビートルズの曲を自分の曲のように発表しはじめるが……。

……というところまで聞くと、かわぐちかいじのコミックス『僕はビートルズ』を思い出す人も多いだろう。そんな話にも触れながら、この映画をご紹介しよう。

映画見てきた:『JOKER(ジョーカー)』はあなたの心の中にいる

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賛否両論、毀誉褒貶入り交じる映画だ。

非常に簡単にいえば、マーベルコミックとともにアメコミ界の双璧を成すDCコミックの『バットマン』の悪役『ジョーカー』誕生の秘密を描いた、サイドストーリーもの。

しかし、それほどシンプルな映画ではない。むしろ『バットマン』の設定をまとった社会派映画というべきか。

主人公アーサー・フレックは、ゴッサムシティに病んだ母親と一緒に暮らす青年。興奮すると感情に関わらず大声で笑い出してしまうという精神的な病にかかっており、常に鬱っぽい。失業率が高く、社会格差が大きなゴッサムシティの下層におり、古びたマンションに住み、ピエロの仮装をして、看板を持って街角に立つのが仕事だ。

街の少年たちは彼をからかい、暴力を振るい、彼はクビになり、街行く人にさえ疎まれ、さげすまれる。そして、病んだ母の妄言はなんの救いにもならず、彼はさらに病んでいき、ダークヒーロー『ジョーカー』へと向かっていく。

……という感じなのだが、見終わってからよく考えてみると、ことはそれほど簡単ではない。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画見てきた:まず馬を射るから大人は感涙『トイ・ストーリー4』

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トイストーリーシリーズ、いやピクサーの映画は本当によくできてる。

先週、話の煮詰まっていない『天気の子』を見たから(それは新海誠監督の良さでも悪さでもある)、余計そう思うのかもしれないが、実によく設計されている。

起承転結、往きて帰りし物語。奪われて取り戻す。新しいキャラクターが活躍する分、古くからいるキャラクターの活躍が抑制されていたり。それぞれのキャラクターの立ち位置と、役割は練りに練って検討されており、誰が狂言回しで、誰が観客の視点となるか? なども綿密に設計されている。画面の明るい、暗い。暖色、寒色。止めの画、動きの画。光を柔らかく回すか、スポット光にするか? 焦点深度を深くするか、浅くするか? すべてはその場面の演出として、ちゃんと設計されている。

その実力の深さをとことんまで思い知らされる映画だ。子供は無邪気に楽しめて、大人は深く考えさせられる。なにしろ、『映画を観に行こうよ』と提案し、お金を出すのは親だ。この親を感動させ『子供にも見せてやりたい』と感じさせ、しかも大人も1時間40分の間まったく退屈させず、それぞれの立ち位置で感情移入させる。子供という将を射るために、まず親という馬を射る戦略を完璧に遂行している。じつに素晴らしい。

(以下、多少のネタバレを含みます)

映画見てきた:予告編に惑わされたら損をする『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』

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ノンフィクション作家の沢木耕太郎さんは、かつて自身の著書『一瞬の夏』を、私小説になぞらえて「私ノンフィクション」と呼びました。それに倣うと、この映画はさしずめ「私ドキュメンタリー」ってことになりそうです。

『いつのまにか、ここにいる Documenntary of 乃木坂46』。そのタイトルどおり、いまをときめくアイドルグループ・乃木坂46に密着して作られたドキュメンタリー映画です。

乃木坂46のドキュメンタリー映画には、すでに『悲しみの忘れ方 Documenntary of 乃木坂46』(2015年公開)という作品があるのですが、今回の『いつのまにか……』は、その正統な続編ではありません。

この映画が初メガホンとなる映像作家・岩下力監督の「気配」が濃厚に漂っていて、前作とはまったく異なる色合いの作品になっているからです。

本作のパンフレットのなかで岩下監督は「この映画は、僕の『乃木坂体験記』です」と書いています。まさにそのとおりの映画なんですよね。良くも悪くも。

そのせいもあってか、乃木坂46ファンの間では賛否両論みたいです。

映画のレビューを見ると「感動した!」「泣けた!」という声がある一方で「監督は乃木坂を知らなさすぎ」「推しメンが映っていない」「いまの乃木坂に必要な映画だと思えない」「何を伝えたいのかわからない」……といった調子の悪評が並んでいます。

いや、そういう声が上がるのも、よくわかるんですよ。わかるんですけど、私個人としてはこの映画、結構好きなんですよね。ええ。

(以下、多少のネタバレを含みます)
(というか、すでにネタバレを含んでいるような気もしますけど)

映画観てきた:『天気の子』永遠の中二、新海ワールドを君は愛し続けられるか?

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『君の名は。』の新海誠監督、3年ぶりの話題作

2016年は本当に映画の当たり年だった。『シン・ゴジラ』があって、『この世界の片隅に』があって、『君の名は。』があった。

その『君の名は。』の新海誠監督が3年を経て送り出すのが、この『天気の子』。音楽もRADWIMPS。これは期待するなっていう方がおかしい。

島から逃げ出して、家出してきた少年『穂高』は、雨が振り続ける街新宿で、少女『陽菜』と出会う。陽菜には天気を左右する不思議な力があって、行き詰まった新宿の暮らしの中で、少年と少女はその力で生活を変えていこうとする……。

(以下、多少のネタバレを含みます)