貼るだけでガラスに機能を追加する3Mのガラスフィルム、前回は地震の際に生まれる歪みで割れてもガラス片の飛散を抑えることで安全性が高まる様子を検証した実験を紹介しました。

しかし、ガラスの危険性は災害時のそれだけではありません。目の前のガラスに気づかずに衝突してしまい、大きな怪我をしてしまうという事故はふだんの生活でも、ニュースにはならないものの繰り返し起こっています。そうした事故の際にも怪我を最小限にするために、さまざまな検証実験が行われているのです。

今回はそのうち、人がガラスにぶつかった際の安全性を検証する実験と、ガラスの防犯性能についての実験についてご紹介しましょう。

今回も、この先は過激なガラスの破壊シーンがありますので、どうぞ覚悟してください!

「子供がぶつかる程度」の恐ろしさ

映画ではよく、アクションの流れで主人公がガラスに飛び込んで突き破るという場面があります。ふだんガラスが割れる様子なんてみることはありませんので、こうしたフィクションのほうがリアリティをもって感じられるくらいです。

しかし現実には、ガラス次第ではこれは大きな怪我につながりますし、運が悪ければ命を落とす可能性もあります。その恐ろしさを実感することができるのが、重りを振り子で30cmの高さからガラスにぶつける「ショットバッグ実験」です。

こちらがその実験設備の様子です。ドアほどの大きさの5mm厚のガラスの前に、振り子が据え付けてあり、ここからショットバッグを自然に振り子でガラスにぶつけます。

バッグの重さは45kg。重いようにみえますが、これが30cmの高さから振り子でぶつかる衝撃は5歳児が駆けてきて体ごとガラスにぶつかる衝撃に相当します。

そこで、この実験を2回行います。まずは、3Mのガラスフィルムが貼られていない、普通のガラスに対する衝撃実験です。次に、ガラスフィルムが貼られている状態と比較してみましょう。

目の当たりにすると、恐ろしいというほかありません。ガラスフィルムを貼っていないガラスはきれいに割れるのかと思ったら、放射状にナイフのように鋭利な断面を見せて裂けてしまいました。

しかも、ショットバッグにその破片のうちの一つが5cmほど刺さっています。もちろん、これが人間だったらひとたまりもありません。過去にはこうして、安全対策を施していないガラスにぶつかって亡くなられた子供の記録も残されており、いまでも決して起こり得ないこととは言えないのです。

しかし、3Mのガラスフィルムを貼ったほうのガラスはどうでしょう。芸術的なまでに放射状に力が分散して、衝突した箇所すらもフィルムは破れていません。

ガラスに対する衝撃の安全性を考える際に、ガラスが粉々に砕けるようにすることで安全性を高める考え方もありますが、それが適当ではない場面もあります。向こう側に突き抜けることがかえって安全ではない場合もあるからです。

そうした場合は、こうして衝撃から守りたい側にガラスフィルムをはることで、割れたガラスで大怪我をすることがないようにできるのです。

たとえばビルを建設する場合、2階以上は前回紹介したような耐震性の高い飛散防止のフィルムを使用し、一階の人通りのある場所は通行人側にむけて衝撃に対応できるガラスフィルムを貼るといった使い分けができるわけです。

侵入者があきらめる防犯性の高いガラスを

3Mのガラスフィルムは、防犯対策としても力を発揮します。

いまの家にはデザイン上、雨戸を設置していない、ガラスがむき出しのものも多くあります。そうした家に犯罪者が侵入する場合に最も多いのが「ガラス破り」の手口で、クレッセント錠の部分だけを破壊して鍵を開けてしまうというものです。すばやく、ほとんど注意をひくことなく犯行を行なうことができるため、ガラス窓の家は特に狙われやすいわけです。

ここでガラスフィルムを使うことによって、完全に侵入を防ぐことはできなくとも、侵入にかかる時間を長くすることによって、犯罪者が焦って犯行をあきらめるように仕向けることができます。

実際のところ、どれほどの違いがあるのでしょう。これも実験していただきました。向かって右側がフィルムを貼っていないガラス、左側が3Mのガラスフィルムをはったほうです。

侵入方法は、バット! 実際の犯罪では錠の部分だけをカナヅチで叩いたりなどといった手法もとられますが、衝撃としてはかわりありません。そこで、比較を行ってみます。

フィルムを貼っていない方のガラスは、たった一撃でパカンという音とともに割れてしまいます。大きな音ですが、一度だけですから周囲に人がいなかったら気づかれないかもしれません。割れてしまえば、もう侵入者の思うがままですので「一度で割れてしまう」ということがいかにリスクが高いかがわかります。

ガラスフィルムをはったほうは、バットで3回殴っても、多少ガラスにヒビが入るだけで割れません。フィルムは室内側に貼ってありますので、破片はむしろ叩いている側に飛散して危ないことになります。

調査によれば、侵入にかかる時間を5分間延ばすことができれば、侵入者は焦り始め、発見をおそれて逃げる傾向にあることが知られています。3Mのガラスフィルムはそうした基準を満たす「防犯性能の高い建物部品目録」として、CPマーク(Crime Prevention = 防犯)の認証をうけているのだそうです。

ガラスが、身を守ってくれる

私たちはふだん、ガラスを内装の一種としてしかとらえていないかもしれません。光を採り入れ、風景を眺める、生活のゆとりの象徴としての窓であったり、シースルーでアクセスの良い扉としてのガラスです。

予想外に人がぶつかったり、侵入者が破壊しようとするのは、ガラスにとっては「例外」的な状況です。そうした状況においてもぶつかった人を守り、侵入から人や財産を守るというのは、ふだんは考えることがないからこそ導入する際には検討しておきたいポイントです。そう、ガラスは危険ではなく、ガラスフィルムを貼れば身を守ってくれるようになるのです!

前回も書きましたが、こうしたガラスフィルムの安全性や、防犯性の知識は、建築関係のかたや施工店などではよく知られているものです。いざ家を立てたい、オフィスを新しくしたいなどといったときには「ところで、ガラスにはフィルムを使っていますか?」と質問するだけで話が進むはずです。

ガラスのフィルムを貼ることで、地震対策としての効果と、衝撃に対する効果の両方が期待できますので、自宅やオフィスの構造やニーズにあわせて組み合わせることで安心できる生活を設計していきたいものです。

さて、ここまでは震災の際の安全性、衝撃や防犯といった場合の安全性についてみてみました。しかし3Mのガラスフィルムの機能はこれだけではありません。

次回は、貼るだけで気温を、紫外線の量を調整することができる魔法のような機能についてみていきましょう。