あなたはいつか、家を建てるかもしれません。仕事で新しいオフィスをかまえるということもあるでしょう。そのとき、きっと思い出すことになる3M (スリーエム)の話題について、これから数回にわけてご紹介したいと思います。

3Mといえばポスト・イットの付箋やスコッチ・ブライトのスポンジといったように、日用品や文具が強い会社というイメージがあります。

しかしそれは3Mのコンシューマー向けの一部の顔に過ぎません。インダストリアルからヘルスケアまで、5つの事業部門に46のコアテクノロジーをもつ3Mが世界中で生み出している製品はなんと55000種類!

そばにあるのに気づかない、見えない場所で活躍しているというのが、3Mの持ち味なのです。

今回紹介するのはそのうちの一つ、まさに透明な製品 3Mのガラスフィルムです。

この先には、過激なガラスの破壊シーンがありますので、覚悟してお進みください!

貼るだけで、ガラスをパーフェクトにする

「ガラス用フィルム」というからには、見ただけではなんの変哲もない、ガラスの表面に貼る透明のフィルムにすぎません。しかしこれを表面に貼るだけで、建物のガラスに「機能」をもたせることができます。

たとえば遮熱性。この薄いフィルムが200層もの構造を内側にもっていて、近赤外線と紫外線をカットします。オフィスの窓側の人だけが暑いというあのやっかいな問題をこれで軽減できますね。

フィルムによって安全性も高まります。先日もメキシコで大きな地震があり、窓ガラスで大勢のかたが怪我をしましたが、ガラスフィルムを貼ることよって、ガラスが割れた際に破片が飛び散ることを大幅に軽減できます。また、道に面したガラスに使うことで、たとえば子供がぶつかった際に怪我をしないような効果をもたせることもできます。

さらに、フィルムを貼るだけで防犯性を高めることもできます。叩いてガラス自体は割れたとしても、貼ってある3Mの強靭なフィルムがなかなか破れないので、犯人が焦って逃げ出してしまうようにしむけることができます。

遮熱・安全性・防犯。この3つをガラスを全部交換するのではなく、表面にフィルムを貼るだけで実現できるというのですから、まさにガラスの「アップグレード」といってもよいわけです。

しかし、そう言ってもなんだかうまい話ばかりでにわかには信じられませんよね?「カタログのスペックだけで語られても」と、辛口なひとなら言うかもしれません。

しかしそこは科学の3Mです。

「すべてを目の前で証明しましょう」ということで、今回はなんと3M社を訪問し、ふだんは見られないガラスの性能の検証を取材させていただけることになりました。

3Mの研究・開発拠点で大掛かりな実験!

今回の実験は危険がともないますので、専用の施設をつかわなくてはいけません。

そこで訪問したのが、相模原市にある3Mの製造・研究開発拠点です。なかなか行ける場所ではありませんので、この玄関のロゴをみるだけで興奮してきます。

その施設の奥にあるこちらが、ガラスフィルムの性能評価のための建屋です。日当たりのよい南向きに向かって、全面ガラス張りになっており、さまざまな機能のガラスフィルムを実際の環境でテストしています。

建物に入ると…。これはいったい!

床に両面テープで 3M カラーの風船が敷き詰められています。

そして入口側には、なにやら巨大なガラス扉付きの観覧スペースが設置されています。「ガラスが飛び散りますので、安全のためです」ということですが、この実験の規模にドキドキしてきました。

今回実験のナビゲーションをしてくださったのは、担当の服部さん。最初は実験のなかでも一番規模の大きい、震災時のガラスの飛散防止機能の検証です。

この実験は日本工業規格JIS A 5759:2016という規格に記載されている試験方法にのっとったもので、地震によって窓枠が建物ごと歪んでしまった場合を想定しています。地震の揺れによって建物が歪むと、窓枠の部分を中心にガラスがわれて飛散するだけではなく、ガラスの中央が大きく脱落して危険です。

それをガラスフィルムによってどれだけ防ぐことができるかを、この実験で検証するわけです。

防護ガラスの向こう側に立っていますが、それでも細かいガラスが飛んではいけませんので防護メガネも装着します。

ガラスフィルム「あり」「なし」でわかる飛散防止効果の違い

まず最初は、3Mの飛散防止性能をもったガラスフィルムを貼ったガラスです。ガラス自体は普通の、よく建物でつかわれている種類のものを使用し、フィルムだけを貼っています。

この正方形の窓枠が、ひし形になるような応力をしだいに加えていくことで、地震の際の影響を再現します。

さあ、まずは最初の実験です。実験が開始して、窓枠に対して目でみてもわかるほどに歪みの力が加わったところで「バキッ」とガラス全体にひびが入りました。しかし、手前にある風船は一つを除いてすべて割れていません。割れたガラスは、すべてフィルム内に閉じ込められているのです。

一番遠くにあった風船が一つだけ割れたのは不思議ですが、おそらく、枠とガラスを固定しているどこかから破片が飛んだ偶発的なもので、フィルム自体が破れた形跡はありません。

そこで、今度はガラスフィルム「なし」の実験です。先程とは比較にならないくらいに危険が想定されますので、空気が緊張してきます。

「バキッ!」と力に耐えられなくなったガラスが割れると同時に、ガラス側の風船が一気に破裂します。そこまで破片が飛び散ったという証拠です。

よく事故などのニュースの表現で「飛び散ったガラスの破片で怪我をし…」という定型文があって、あまり現実感が伝わってこないのですが実際にみると恐ろしいということがわかります。

この一番手前の風船が4mの距離にありますので、ガラスの近くにいたならもちろんのこと、高い階から破片が降り注いだ場合も下にいる人はひとたまりもありません。

もう一つ注目したいのは、割れ方です。ガラスフィルムがない場合は、窓枠に固定されて耐えている部分と、耐えきれずに割れた部分との境が裂け目になって、するどいナイフのような形をして砕けて脱落しています。

ガラスフィルムが貼ってある場合も、力の加わり方は同じですが、フィルムがあるために脱落がおきず、内側で割れるだけでガラスは原型をとどめています。これがとても大事!

これはもちろん飛散防止という意味でも重要なのですが、災害時に風雨を避け、コンビニなどといった店舗なら限定的に業務を再開することが可能になりますので、復旧活動の助けにもなるわけです。

想像してみてください。災害では何万という建物の、何十万というガラスが影響をうけます。それを復旧させるための物資の調達も、手間も、災害時は膨大になります。こうしたガラスフィルムを使っている割合が少しでも多くなれば、それだけ自分自身も社会全体も助かるわけです。

うれしいことに、3Mのガラスフィルムのほとんどには、この飛散防止の機能が備わっています。

すでに家をもっていたり、窓のあるオフィスをもっているというひとも、ガラス自体を交換せずともフィルムを施工することだって可能なのです。

なぜガラスフィルムについて知ってほしいか

ガラスがこれほどまでの力をうけて割れる様子はなかなか見られませんので「うわっ」という驚きを感じたひとも多いと思います。その驚きが冷めない前に知ってほしいのが、これが「選択」だということです。

命を守り、災害時の対応を楽にするガラスフィルムという選択肢があり、サイズ次第ではガラスをすべて取り替えるよりも安いコストで、実現できるということを知ってほしい。そのための大掛かりな実験だったのです。風船なども、前日の夜まで頑張って貼り付けていたのだとか(笑)

こうした情報は、ふだんは施工業者などのレベルで止まっていますのでなかなか一般の私たちが目にしたり、知るチャンスは多くありません。しかし「ガラスフィルムという選択肢がある」と知っているなら、家を建てるとき、オフィスをかまえるときに、「そういえばこの施工ってできます?」と質問することができるわけですね。

しかし、3M のガラスフィルムの機能はまだこれだけではありません。続く記事では第2、第3の実験についてもご紹介していきましょう。

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