賛否両論、毀誉褒貶入り交じる映画だ。
非常に簡単にいえば、マーベルコミックとともにアメコミ界の双璧を成すDCコミックの『バットマン』の悪役『ジョーカー』誕生の秘密を描いた、サイドストーリーもの。
しかし、それほどシンプルな映画ではない。むしろ『バットマン』の設定をまとった社会派映画というべきか。
主人公アーサー・フレックは、ゴッサムシティに病んだ母親と一緒に暮らす青年。興奮すると感情に関わらず大声で笑い出してしまうという精神的な病にかかっており、常に鬱っぽい。失業率が高く、社会格差が大きなゴッサムシティの下層におり、古びたマンションに住み、ピエロの仮装をして、看板を持って街角に立つのが仕事だ。
街の少年たちは彼をからかい、暴力を振るい、彼はクビになり、街行く人にさえ疎まれ、さげすまれる。そして、病んだ母の妄言はなんの救いにもならず、彼はさらに病んでいき、ダークヒーロー『ジョーカー』へと向かっていく。
……という感じなのだが、見終わってからよく考えてみると、ことはそれほど簡単ではない。
(以下、多少のネタバレを含みます)