『埼玉県民には、そこらへんの草でも食わせておけ!』

『埼玉なんて言ってるだけで、口が埼玉になるわ!』

という衝撃的な差別発言があると聞き、いろいろと神経質な昨今、大丈夫かな……と思いながら見に行ったが、これが抱腹絶倒。最初から最後まで、笑いが絶えない映画だった。これは傑作w

特に埼玉、千葉、茨城、群馬方面の方には絶対お勧めw

(以下多少のネタバレを含みます)

コンプレックスを超越して、ギャグに昇華

人は出自の話題に関してはデリケートなものだ。

東京カレンダーの港区女子論にしたってそうだし、六本木、広尾、白金、成城、自由が丘……など住んでるだけで、なぜかステイタスがありそうな土地もある。

クルマのナンバープレートにしたって、品川ナンバーとか、湘南ナンバーとかね。

反面、住んでるだけで、なぜか自己卑下してしまう住所地に住む人たちもいる。

それが埼玉……ということらしい。もちろん、千葉や茨城、群馬にしたって。

いや、千葉も群馬も茨城も埼玉も、日本全国という広さで見ればけっこう都会だと思うのだが、なぜか東京の近くにあるだけに、コンプレックスを感じるものらしい。

そのコンプレックスを極限まで劇画化して、逆に昇華したのが、この『翔んで埼玉』だ。中途ハンパに気を遣いながら扱わなかったところがいい。突き抜けてるからこそギャグとして、成立しているのだ。

埼玉差別をギャグに昇華した、魔夜峰央ワールドを実体化させる豪華監督・俳優陣

ご存じのように原作は、魔夜峰央(パタリロの人ね)が描いた同名のコミックス。’82年という時代にしたって、酷過ぎる埼玉ディスに満ちたコミックスだったが、なんと30年を経て復刊されて、しかも大きな反響を得る。

この映画をギャグとして昇華させているポイントは3つあるが、そのうちのひとつが、この宝塚にも通じる華麗なる魔夜峰央ワールドだ。

次に、その魔夜峰央ワールドを補完する豪華な俳優陣。とりわけ、主役である東京に潜入する隠れ埼玉県人『麻実麗』を演じるGACKT、伝説の埼玉県人『埼玉デューク』を演じる京本政樹、千葉解放戦線のリーダー『阿久津翔』を演じる伊勢谷友介、あたりの超濃い華麗なる人々が魔夜峰央ワールドの上で悪乗りしている(笑)

もちろん、中尾彬、竹中直人、ブラザートムあたりの個性派俳優もガッツリと脇を固めている。

そして、麻実麗の最大の敵であるハズなのに、あっさりと麻実麗に惚れてしまう生徒会長壇ノ浦百美を演じるのは、世間の噂では「性格悪い」と言われているのにも関わらず卓抜した演技力で、どんな役もでも完全に溶け込んだ演技を見せる二階堂ふみ。本来壇ノ浦百美は男の子で、この物語はBLだったのだが、二階堂ふみがその男の子を演じることで、ノーマルな感性の人でも抵抗なく感情移入できるようになっている。

そして最後のそして、最大のポイントが監督・武内英樹。

ドラマ『電車男』や映画『テルマエ・ロマエ』でも知られる、(比較的安価な合成や予算で作られた)現実のようでさっぱり現実的でない異次元の世界に人を誘う彼の演出でもって、この映画は完成する。

こういうワケの分からない世界を描かせると、本当に武内英樹監督は最高。川を隔てての埼玉と千葉のディスり合戦なんてホント最高だった。

予告編動画の数十倍面白いので、この感性に納得できるなら、ぜひ映画館でやっているウチにぜひ観て欲しい。DVDのテレビ画面ではなく、ぜひ映画館で、他の人と一緒に大爆笑して欲しい映画である。特に埼玉はじめ、北関東の方々には。

しかし、時と場合によっては出生地で差別するなんて、とんでもない問題になりそうなテーマだが、それをこうやって笑って見られるなんて、本当の意味で出生地差別が薄れた平和な時代になったものだと思う。