Bluetoothイヤホンが売れています。まじ売れています。

2018年10月1日調べの価格コムのイヤホン・ヘッドホンランキングは1位から10位を超えてその先までBluetoothイヤホン&ヘッドホン。BCNランキングも1位3位5位6位8位9位とBluetoothイヤホンがひしめき合っています。

9月に開催されたオーディオテクニカの新製品発表会でも、Bluetoothワイヤレス機の売上が昨年比3倍弱と大きく伸びていることをアピールしていましたし、ほかの企業からも近しいお話を聞きました。

ヘッドホン端子を排したiPhone 7が登場した2016年のときは、まだ有線イヤホン全盛時代。

しかし2年で、大きくシェアを伸ばしてきています。確かに便利ですもんね。ワイヤレスイヤホンとヘッドホン。

特にここ1年で注目度がグッと高まってきているのが、EARINがKickstarterで大成功を収め、アップルのAirPodsが市場を大きく広げた完全ワイヤレス(トゥルーワイヤレス、フルワイヤレス)と呼ばれる、左右のイヤホンを結ぶケーブルも排したタイプ。

市販されはじめたのは2015年からですが、いまやBluetoothワイヤレスイヤホンのなかでも強い存在感を持つカテゴリとなっています。

コモディティ化が進み、低価格な完全ワイヤレスイヤホンが登場したというのもあるのでしょう。次に買い換えるなら完全ワイヤレスイヤホンがいい、という方も増えているようです。

とはいえ無闇矢鱈に購入してはいけません。音が遅れる、片方だけ音が切れるといったトラブルが起きやすいモデルもあるのですから。

完全ワイヤレスイヤホンの選ぶポイント01・NFMI対応製品は音切れしにくい

Bluetooth電波の周波数帯は2.4GHz。電波が回り込みにくく、距離や障害物によってパワー(信号強度)が落ちやすいといった特徴があります。特に水分に弱い。超近距離であっても水があると、電波が大きく減衰しちゃうんですよね。さて一般的な完全ワイヤレスイヤホンの場合、左右の耳に装着したイヤホン間でも通信を行うのですが、その間に必ず入ってくるのが頭部、ですよね。

この頭部が障害物となるため、完全ワイヤレスイヤホンのBluetooth電波は途切れやすいんですよ。なんとか、無理やり頭部の外周を回り込んで届いたか細い電波で音をやり取りする製品が多めです。

ゆえに、周囲に同じ周波数体を使うWi-Fi、医療用機器、電子レンジ、自動ドアなどがあると音がブツブツと切れてしまいやすいんです。コンビニに近づくたびに切れると、こっちもキレそうになりますよマジ。

そこで完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ際は、音・電波が切れにくいモデルから選ぶべき。

まずはNXPセミコンダクターズが開発したNFMI(近接場磁気誘導)技術を用いたモデルをチェックしましょう。同社のMiGLOテクノロジーもNFMIをベースとしています。

もともと補聴器用の技術ですが、10.6MHzという高い周波数帯の電磁気を使うために水分を含む障害物があっても途切れにくいという性質を持ちます。消費電力も少ないというオマケつき。反面、1メートル以上での通信が難しいのですが、イヤホン用に使うのであればまったく問題ナシというわけ。

同技術を用いているのはEARIN M-2、Xperia Ear Duo XEA20、Jabra Elite Sportなど。

完全ワイヤレスイヤホンの選ぶポイント02・普及に期待したいQualcomm TrueWireless Stereo Plus

2018年1月のCES2018において、クアルコムがQualcomm TrueWireless Stereo Plusテクノロジーを採用したBluetoothチップを公開しました。Snapdragon 845シリーズのSoCを搭載した端末との接続時に限りますが、プレーヤーとなる端末と左のイヤホン、そして端末-右イヤホンと、2系統の通信を同時に行うことで、音切れしにくくする技術です。

まだ生まれてまもない技術であるため、現時点で確認できている採用製品はAVIOT TE-D01bのみ。年末、来年初頭にかけて対応品がでてくると予測できるので、最新ハイエンドAndroidを使いまくっている勢の方はしばしお待ち下さい。

完全ワイヤレスイヤホンの選ぶポイント03・アンテナ技術で安定性を確保。なんだかんだと強いAirPods

冒頭のランキングをチェックすると、AirPodsの人気の高さに軽く驚けます。とことん売れているんですよねAirPods。日本で一番2.4GHz帯が混み合うんじゃないかと思える渋谷駅前スクランブル交差点であってもさほど音が切れずに安定しているし、鉄板モデルであることには違いありません。

うどんを耳から垂らしているといわれたスタイリングですが、あの部分にはなが~いアンテナが入っています。アンテナを外に出すって重要なんだなあと強く実感。アンテナにこだわったモデルは他にもありますが、僕が知る限りはAirPodsの安定性には届いていないものが多いんですよ。

完全ワイヤレスイヤホンの選ぶポイント04・コンパクトな充電ケースが望ましい

完全ワイヤレスイヤホンを使っていると、片耳のイヤホンをなくしたらどうしようという不安がつきまといます。ゆえに音楽を聴き終えたらすぐに収納できる環境がベスト。充電ケースが小さかったり細かったりして、ポケットから出し入れしやすいモノがグーです。

しいては、コンパクトなイヤホンが望ましいとなるわけで。必然的にケースも小さくなりますから。

写真はEAIN M-2のもの。耳栓サイズのイヤホンゆえ、充電ケースはマッキーくらいの太さですよ。

通信技術に強い企業が伸びつつあるオーディオ業界

EARIN(元ソニーエリクソンのエンジニアが作った)、ソニーモバイル、Jabra(通信・無線業界で燦然と輝くGNグループ)に、クアルコムと、アップル。本稿で名を上げてきたメーカーを改めてみると、純粋なオーディオメーカーがないことに気がつきます。冒頭でオーディオテクニカの話を出しましたが、彼らは今季、満を持して完全ワイヤレスイヤホン市場に乗り込んできた存在ですし、ソニーは昨年に高音質モデルを出すも音切れ問題に悩まされていました。

最高音質を求めるなら有線接続モデルがいいし、今までに培ってきたアナログ技術のレベルの高さは誰もが認めるものでしょう。しかし完全ワイヤレスという高レベルなデジタル領域に踏み込むには、ソニーやオーディオテクニカにしても(そして他のオーディオメーカーにしても)敷居が高かったということが透けてみえてきます。

企業間の製品品質格差をなくすためにクアルコムがよりよいBluetoothチップを作っていくのでしょうけど、それを使いこなす技術もまた必要。いや、ソニーやオーディオテクニカ、JBLやAKGを傘下に持つハーマンインターナショナルといった、もともとデジタル方面の研究開発に積極的なメーカーはまだ大丈夫でしょう。しかし職人技を磨ききることに没頭していたメーカーはどうかしらん。深センでBluetoothユニットを調達しておっけー、という時代は終わりそうな気がすることですし。安価なモデル以外は。