オタクがマッチョに、女子高生がデブオヤジになって、ゲームの世界でサバイバルをするという設定で話題の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。軽快で痛快で、面白いので、ご興味ある方は、ぜひ映画館でどうぞ。

そもそも、この『ジュマンジ』には原作というか、1996年に上映されたロビン・ウィリアムズ版の前作がある。基本的にはそのストーリーを引き継いでいるのだが、少し陰鬱な感じがあって、ホラー調に仕上がっている前作に対して、本作はアクション大作。子連れでも盛り上がれる楽しさだ。

まずは、前作との比較、そして、本作の面白さについて触れて行こう。

(以下、多少のネタバレを含みます)

まずはホラー調の前作をご紹介

1996年に公開された『ジュマンジ』は、呪われたボードゲームをテーマにした物語。

ストーリーは1869年。2人の少年たちが、『JUMANJI(ジュマンジ)』と記された、箱を土中に埋めるところから話は始まる。100年後の1969年。靴工場を経営する地元の名士の息子であるアランという少年がその箱を掘り起こし、その呪われたゲームを始めてしまうのだ。そして、ゲームの中に閉じこめられてしまい、行方不明になった少年を殺したと思われた父親の会社は倒産し、一族は家を追われる。

その26年後の1995年、別の家族がその家に引っ越して来て、子供たちがゲームを見つけて始めてしまう。箱の中にはすごろくのようなボードゲームが入っており、サイコロを振る度に駒が勝手に動き、マス目に応じたイベントが起る。普通のすごろくと違うのは、そのイベントが現実世界に起るというところだ。殺人的な『巨大な蚊』や、災いを起す『イラズラ好きな猿』そしてジャングルの動物たちが現れ、子供たちは命からがら逃げ回り、街は大パニックに陥る。しかし、それらの災いを消すにはゲームを終わらせるしかなく、ゲームの中から26年ぶりに現実社会に登場したアランとともに、困難なゲームを終わらせようとする。

ゲームの災いが登場するたびに、原住民の太鼓のような音が聞こえてくるのが特徴だ。

新作『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』も、ゲームの世界が現実となることに変わりはない。しかし、2018年度版のジュマンジはビデオゲームにアップデートされており、しかもゲームの災いが現実世界に湧き出して来た前作と違って、登場人物たち4人がゲームの世界に引き込まれていくという構成になっている。

物語的には、1995年に終わった前作のジュマンジが、1996年にある少年に拾われ、その少年も物語に登場する。ストーリーも繋がっているし、前作のオマージュともいうべきアイデアが随所に配されているのも面白い。ゲームが魔力を発する時に、原住民の太鼓の音が聞こえてくるのも同じだ。

キャラクター構成がまるで映画版ドラえもん

オタクな主人公のスペンサーは、ロック様ことドウェイン・ジョンソンが演じるスモルダー・ブレイブストーン博士に。スペンサーをいつもいじめているフリッジという黒人は、チビのムース・フィンバーという従者に。自撮り大好きのインスタ女子ベサニーはデブオヤジことシェリー・オベロン教授に。そして、陰鬱な腐女子マーサは、セクシーな格闘家ルビー・ラウンドハウスに、それぞれキャラクターが変わって、冒険をすることになる。

それぞれのキャラクターの演技が絶妙なのだ。つまり、ロック様演じるストーン博士は身体はマッチョなのにオタクないじめられっ子のメンタルを演じる。ケヴィン・ハート演じるフィンバーの中身は体格のいい黒人高校生、ジャック・ブラック演じるオベロン教授の中身はなんと美人女子高生。カレン・ギラン演じるラウンドハウスの中身は腐女子……という複雑な演技を、それぞれが絶妙にこなしていて、ひじょうに面白いのだ。

この構成がなんだかとっても映画版ドラえもん。

元のスペンサー、フリッジ、マーサ、ベサニーの役柄は、それぞれのび太、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃん、そのもの。架空の世界では、のび太が名ガンマンになるように、縦横無尽に格闘力を発揮するブレイブストーン博士に。元来いじめっ子であるはずのフリッジが、劇中友情を発揮してスペンサーであるブレイブストーンを助けたりするのもそのままだ。

ドラえもんの役柄は『ジュマンジ』そのものだろうか。

あのドウェイン・ジョンソンのメンタルがチキンハートになっている演技を見るだけでも十分に面白いが、劇中のゲームとしての表現(腕にタトゥーのようにライフが表示さえていたり、胸を叩くと中空にスペックが表示されたり、NPCがいたり)もとても面白い。

アクションの派手さも含めて、劇場で楽しみたい映画だ。