もうあの『黄色いヤツ』が好きな人なら必見の映画。
怪盗グルーシリーズの3作目。いや『ミニオンズ』を入れると4作目の、グルー/ミニオンシリーズの映画となる。
これも前回レポートした『カーズ3/クロスロード』と同じく、巧みにお父さん世代へのマーケティングを取り入れているとことが興味深いので、そのへんも含めてレポートしよう。
(以下、多少のネタバレを含みます)
なぜに、日本じゃ原題とこうまで違う?
タイトルは上にも書いた通り『怪盗グルーのミニオン大脱走』。
プロモーションのポスターなども、どっちかっていうとミニオン押しのものが多い。しかし、映画はどっちかっていうとグルーたちのストーリーが軸となっており、ミニオン軍団はグルーファミリーのエピソードとあまり絡まず、勝手に刑務所に入ったり、脱走したりする。
話に沿って正確にタイトルを付けるなら『怪盗グルーとその双子の兄弟ドルー対バルタザール。ミニオンを添えて』ぐらいの感じだ。
特にミニオン達が捕まったり、脱走したりというエピソードは、グルー側のエピソードとあまり関係なく起こる。そういう意味では、ミニオンだけがひたすら活躍する『ミニオンズ』ほどミニオン濃度は高くない。
ちなみに、3部作の邦題は
『怪盗グルーの月泥棒』
『怪盗グルーのミニオン危機一髪』
『怪盗グルーのミニオン大脱走』
と、ミニオン人気とともに、ミニオンをフィーチャーしたものになっているが、原題は
『Despicable Me』
『Despicable Me 2』
『Despicable Me 3』
と味も素っ気もないも。『Despicable』とは『卑劣な』とか『見下げ果てた』とか言うなので、まぁ、『悪党』『悪党2』『悪党3』みたいな感じのタイトルなわけ。悪党がグルーを指すのだとすれば、原題にはミニオン成分はまったくない。
米国のプロモーションやサイトを見ると、日本ほどミニオンに偏ったプロモーションではないので、ここまでミニオン寄りのプロモーションになっているのは、『かわいい』もの好きの日本人向けなのかもしれない。
そういう意味では、若干プロモーションに偽りアリというか、ミニオン大活躍を楽しみに行くとちょっと違う。基本的には『怪盗グルーとその双子の兄弟ドルー対バルタザール』がストーリーの主軸なのだ。
お父さんとしては音楽がたまらん
前回、『カーズ3/クロスロード』が子供はともかくお父さんのハートをえぐる話であることはお伝えしたけれど、『怪盗グルーのミニオン大脱走』も、ちゃんとスポンサーであるお父さんのハートをえぐる工夫はされている。
ポイントは今回の敵役である『バルタザール・ブラット』。こいつがポイント。
『肩パットを入れた』古いファッションを好む『古くさい』悪党であるバルタザールが活躍するシーンで流れる音楽はことごとく’80年代の名曲なのだ。
登場シーンがマイケル・ジャクソンの『BAD』であるのも懐かしいが、ヴァン・ヘイレンの『JUMP』、マドンナの『Into The Groove』、A-haの『Take On Me』など、子供たちに分かるわけもない、’80年代に青春を過ごしたお父さんお母さんを狙い撃ちにした曲ばっかりがガンガンかかる。
見ていて、ついついリズムを取ってしまったり、口ずさんだりしてしまうお父さん、お母さんも多いはずだ。
もちろんそれだけでなく、忖度していい子ちゃんばっかりになってしまう現代では、無邪気にイタズラと悪事の限りを働くミニオン達や、養子の三姉妹の前で良いお父さんになろうとするが本来悪党であるグルーの『ワル』っぷりは大人にとっても痛快だ。
また、映画は原語を字幕版で楽しむべきというポリシーの方も多いだろうが、本作でいえば笑福亭鶴瓶のグルーがハマり役過ぎて、日本語版で見たくなってもしまう。
双子の兄弟ドルーの生瀬勝久、ルーシーの中島美嘉、バルタザール・ブラットの松山ケンイチなど、日本語のキャストがはまり役で、秀逸。といっても、上映が圧倒的に吹き替え版が多いので、字幕版を見るのが難しい……という事情もあるが。
というわけえで、カーズも本作と同じく家族を誘って見に行って損はない。
お子さんはもちろん、むしろお父さん、お母さんも満喫できるハズだ。この夏はなかなか秀作が多くて嬉しい。