周囲の雑音がうるさい!集中して作業がしたい!というときにまっさきに思い浮かぶアイテムは耳栓だと思います。

前回の記事でもみたとおり、正しく装着すればとても高い遮音性をもっていますし、手軽で持ち運びしやすいというメリットがあります。

しかし何度も付け外しをしたい場合は耳栓は少し面倒ですし、なにより私はそうなのですが、耳全体で遮音をしないと入り込んでくる音が気になってしまう場合もあります。

そこで利用できるもう一つのアイテムが、イヤーマフです。レーシングカーのトラックで監督が通信機能付きのものを身につけていたり、飛行場のスタッフが身につけているのを映像でみると思いますが、もともとはそうした騒音の多い現場での工業用途の製品です。

しかしこのイヤーマフ、意外に日常でも活躍しているんです。「子供がいるならイヤーマフ」といってもいいくらいなのです。その理由について見てみましょう。

イヤーマフの構造と性能

こちらは3Mのイヤーマフ、PELTORシリーズの2つの製品です。

イヤーマフは耳にかぶせるカップ部分と、ヘッドバンドがついている見た目はヘッドフォンのようですが、もちろん電気は使っていませんし、重さもとても軽くなっています。

というのも、中を開いてみるとこのとおり、ほとんどが吸音のための素材だけで構成されているからです。このウレタンが音をさまざまな波長でとらえて通りにくくしているのですね。

前回と同様に、イヤーマフのなかに計測用のマイクを取り付け、それがスピーカーから発せられる音量とどれだけ差があるかを測定してみましょう。差があればあるほど、効果的に音を吸収できていることになります。

結果は、耳栓の性能を上回る36dBもの静音性能です。

耳栓だと、単純に音が聞こえなくなったという印象があったのですが、イヤーマフのそれは「世界が止まったのではないか」と思うほどの静寂さで驚きます。

本来だったら聞こえるような、手元で物を置いたときの音、服がすれるときの音といった、環境音のすべてが消え失せてしまうのです。これは、座って集中したいときや、騒音にじゃまされたくない乗り物の中などで抜群の効果を発揮しそうです。

聴覚過敏とイヤーマフ

そこまでの静音性は工場などで働いているのでない限り必要ないのでは?と思われるかもしれませんが、実は身近なところで大きなニーズが有るのですと説明するのは、前回も登場した3M 安全衛生製品事業部の池田さん。

実は、発達障害をもつ子供のなかには、それが聴覚過敏をともなうことが少なくなく、ふだんの生活のなかでヘッドホン、あるいはイヤーマフを手放すことが困難な子も大勢いるのだそうです。

聴覚過敏とは、私たちがふだんさらされている何気ない大きさの環境音に対しても耐性が低く、不快に感じてしまうという状態のことを指します。

たとえば突然鳴り出すトイレのエアタオルや掃除機の音、救急車のサイレンやバイクのふかし音、急な人の叫び声や赤ちゃんの鳴き声、太鼓や聞きなれない音楽などといったものはどれも聴覚過敏を引き起こしやすいといわれています。

私たちにとってはたんに「大きな音」で済んでいるものが、聴覚過敏の人には耐え難いほどに大きく、耳元でガンガンと打ち鳴らすように聞こえて感覚を圧倒してしまうのです。

発達障害、特に自閉症スペクトラムをもっているひとの約18%にこうした聴覚過敏が発生しているという報告もあり、こうした人には音に対する対策は不可欠なのです。

特に聴覚過敏をもっている子供は、それによってパニックを起こしてしまうことも多いらしく、そうしたときにイヤーマフを利用することが勧められています。たとえばこちらの本、「発達障害の子のためのすごい道具」でも:

音から身を守り、パニックを防ぐための道具として3Mのイヤーマフが紹介されています。

切ないことに、そうした子は電車の中やショッピングモールなどといった場所でも常にイヤーマフをつけていると、それがヘッドホンをしているのだと勘違いをされて、たしなめられることもあるのだそうです。

発達障害のあらわれかたの一つとしての聴覚障害について、もっと世の中の理解が広まるべきといってよいでしょう。

聴覚障害ではなくても、子供にはイヤーマフ

また、聴覚障害をもっていなくても、小さな子どもにはイヤーマフを用意したほうが良いことが近年は指摘されています。

外耳道がまだ短い子供はコンサートなどでは大きな音の影響が強めに出てしまいます。大きな音を耳にした子供が耳をふさぐのは、わからず屋なのではなく、大人に比べてずっと大きく聞こえているのです。

たとえば「earmuff concert」で検索するとこのとおり、子供がイヤーマフをしている画像がたくさん検索されます。右下のほうにいるのは、グウィネスパルトロウさんでしょうか?

私も、先日日産自動車のNISMOフェアに行った際に、実際に子供用に3Mのイヤーマフを携行されている両親に会うという偶然がありました。

話を聞いてみたところ、やはりサーキットのような爆音のある場所は、子供の耳にとって悪影響があるので手放せないのだそうです。

コンサートでイヤーマフをしている子供をみかけたなら、それは失礼な振る舞いをしているのではなく、大きな音を適度にして害がないようにして楽しんでいるのだというわけですね。

耐久性と装着性にすぐれた、3M PELTORイヤーマフ

そうした意外な有効性をもっているイヤーマフ製品ですが、3MではPELTORという、1950年にスウェーデンで誕生した空軍パイロット用の聴覚装置を作っていた会社を傘下に加えて製品として提供しています。

その特徴は、何度も装着していても着圧が弱まらない耐久性と、快適な装着性で、長い作業のあいだもストレスなく使用することができるようになっています。

私も実際に使ってみた体験は「これは病み付きになる」というものでした。いままで「静か」だと思っていた空間が、意外に機械のファン音や、小さな雑音にあふれていたということが、イヤーマフをつけてみると実感できます。

仕事に集中したいとき、音の影響から開放されて休みたいとき、家庭でもイヤーマフを利用するのはおすすめです。

なにより、世界にはイヤーマフを手放せない人もいるのだということも知ることができたのは大きな収穫でした。

いかがでしょう? みなさんも一度はイヤーマフが与えてくれる静寂の快適さを試してはみませんか?

追記:日本でも浸透してきた「ライブにはイヤーマフ」という新常識

この記事を書いてから、バンド ASIAN KUNG-FU GENERATION がツアーで児童のイヤーマフの貸出と、会場での着用のチェックをすると発表して話題になっていました。

またFUJI ROCK FESTIVALでもイヤーマフが公式グッズとして発売されるなど、しだいに日本でも大音量がとくに子供にもたらす影響が知られるようになってきています。

これを機会に、イヤーマフが聴覚過敏の人にも必須のアイテムであることや、それをつけてコンサートにいることがなにも失礼なことではないことが周知されるといいですね!

 

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