『空にそびえる、くろがねの城♪』
というテーマソングが、鳴り響いた時点で、もう涙が溢れそうだった。

そう、今48歳の私の魂の根源にあったのは『マジンガーZ』だったという事を思い出してしまったのだ。なにしろ、半世紀ほど前のことだし、調べてみるとアニメの放映は’72年12月から’74年9月ということなので、私は3歳から5歳。半ば忘れていたが、この『マジンガーZ/INFINITY』を見ると、すべてが溢れるように思い出された。

そう、私が生まれて初めて買ってもらったレコードは『マジンガーZ』のテーマソングのものだったし(記憶が定かでないが、ソノシートだったかもしれない)、ジャンボマシンダーも、ミサイル要塞重戦車Zも持ってた。40年以上、忘れ去っていたけど、そんなことも全部思い出した。自由帳はいつもマジンガーZでいっぱいだった。


(以下、多少のネタバレを含みます)

往年のファンの心をグウの音も出ないほど揺さぶる

何がすごいって、もうのっけから全開の戦闘シーンだ。

雲霞のごとく押し寄せる機械獣に、マジンガーZとグレートマジンガーが、『ブレストファイヤー』『ルストハリケーン』『ロケットパンチ』『アイアンカッター』『スクランダーカット』『サンダーブレイク』『グレートタイフーン』……と、必殺技(もちろん、技の名前は叫ぶ)の連打で、押し寄せるオームをなぎ倒す巨神兵のような活躍。

そして、始まる『空にそびえる、くろがねの城♪』というテーマソング。もう、この時点で滂沱の涙である。

考えてみれば、そのあとに、コンバトラーVだって、ダイターン3だって、ガンダムだって、イデオンだって、ダンバインだって、エルガイムだって、エヴァンゲリオンだってあるわけだが、僕らにとって登場して操縦する巨大ロボットの根源と言えば『マジンガーZ』をおいて他にないわけだ。強いんだ! 大きいんだ! 僕らのロボットなんだ!

兜甲児も、剣鉄也も、弓さやかも、炎ジュンも、ボスも、弓教授も、のっそり博士も、せわし博士も(旧マジンガーZの最後の方で死んだもりもり博士は遺影として出てくるという芸の細かさだ)、みんな出てくる。Dr.ヘルだけじゃなくて、ブロッケン伯爵も、あしゅら男爵も出てくる。これだけでも感涙もの。しかも、劇中では10年の時を経て、成長してたり、立場が変わってたりもする。ちゃんと辻褄が合ってる。

それだけじゃなくて『その力は、神にも悪魔にもなれる』など、原作からも使われているセリフもちりばめられ、本作が『マジンガーZ/グレートマジンガー』の正統な後継作であることを感じさせてくれる。

ガンダム、ヱヴァンゲリヲンの後の『マジンガーZ』

驚かされたのは、冒頭の戦闘シーンの直後に流れるマジンガーZの主題歌は水木一郎が新たに再録したものだという。たしかに、45年前そのままの音響では、この迫力は出なかったに違いない。

そして、戦闘シーンから、何から、すべてが往年のマジンガーZをなぞらえながらも、現代のレベルでリメイクされている。

ロボットアニメの歴史を大きく分けると、アトム、鉄人28号に代表される『黎明期』、マジンガーZが切り開いた『搭乗する巨大ロボットの時代』、そしてガンダムが開いた『兵器として量産されるロボットの時代』、そしてヱヴァンゲリヲンが開いた『ヱヴァンゲリヲンの時代(これは何とも言いようがないが)』の4つの時代に大別できる。

その、『ガンダム時代』と『エヴァ時代』をちゃんと、経たところにある『マジンガーZ』になっているのだ。

たとえば、今回のマジンガーZにはガンダムのMSVなどの描写で生まれた装甲パネルの継ぎ目がちゃんと描かれているし、遺跡から蘇ったマジンガーZインフィニティに取り込まれるグレートマジンガーの生体っぽい感じなどにはヱヴァンゲリヲンの影響が見られる。

そういう意味で45年の歳月をちゃんと取り込んだ『マジンガーZ』なのだ。そういえば、背後に富士山を抱えた光子力研究所は、まるでヱヴァンゲリヲンの第三新東京市のようだ! ……と思ったが、そもそもが第三新東京市自体が、マジンガーZの光子力研究所へのオマージュだったのかもしれない。

そういえば、光子力研究所のモニターの表示はヱヴァンゲリヲンっぽいし、『WARNING-データ侵入反応検出』とか『思考防壁展開』なんていう文字表示はエヴァっぽ過ぎるから、これも意図的にやっているのだろう。

マジンガーZ時代にはなかった、光子力エネルギーの集積による別次元への穴というストーリー展開や、なんだかインフィニティにとってのファティマのような存在であるリサの存在も、そう考えればエヴァへのオマージュなのかもしれない。リサをあんなに綾波レイっぽいキャラに作る必要があったのかどうかだけはちょっと疑問だけど。

45年前に受けた最初の衝撃から、いままでのすべてのロボットアニメの影響を取り込んで、再び原点の衝撃を思い出させてくれる作品がこの『マジンガーZ INFINITY』だ。アラフィフのみなさんには、ぜひこの衝撃を劇場で公開されているウチに体感していただきたい。

▼映画の小説版

▼映画で描かれる物語の前日譚(コミック)。これを読んでおくと映画はより理解できるそうです。