京都人がイヤミだとよく言われるが、イヤミなのではなく文化というのは成熟すると、直裁的な表現は下品に感じるようになり、婉曲表現を好むようになるのだ。

言わば豪放なアメリカン・ジョークに対してクセのあるイングリッシュ・ジョークも言わばそういう存在。

結局のところ、イギリス人はアメリカ人を下品で野卑と思っているところがあるし、その実、数倍残酷で、痛烈で、徹底的だったりする。そんな、イギリスっぽさが良く出た映画、それが『キングスマン:ゴールデン・サークル』。

(以下、多少のネタバレを含みます)


ちなみに、本作は2作目で1作目の予告編はこちら。

 

すべてがトゥーマッチ

スパイ映画の王道といえば、『007』に『ミッション・インポッシブル』だが、ある意味本作『キングスマン:ゴールデン・サークル』はスパイ映画のエッセンスを絞り出してブーストしたような作品。

つまりは、バリバリに英国紳士で、暴力的で、カーアクションがあって、エロくて、残酷で、秘密兵器が出てきて、奇想天外なアクションがてんこ盛りだ。ちょっと行き過ぎて笑いを誘ってしまう部分もあるが、『オースティン・パワーズ』ほど、お笑いでもない。

すべてにおいてトゥーマッチだから、そこを受け入れられない人もいるかもしれない。

そこまで死ななくてもというぐらいバンバン簡単に人は死んで行くし、残酷ぶりも(画面上リアルにエグいシーンはないが、それでもPG-12)なかなかなものだ。特に観賞後にハンバーガーを食べるスケジュールだったら、それは修正しておいた方がいい。

劇中たびたび使われる『Manners Maketh Man——マナーこそが男を男たらしめる』という言葉も、冗談なのかもしれない。ちなみにMakethは誤植ではなくMakesの古語表現。

既存のスパイ映画に飽きた、上級者に

約2時間というパッケージに起承転結を収め、すべてが理屈に合うようにして、なおかつ笑いと感動をなんて無理がある。

ソフィスティケートされていつつも、十分に風刺が効いて、毒があって、刺激が強いのをお望みの京都人のようなあなたにお勧めの映画だ。