少し前に「世界の空軍ドッグファイト」を見た世代、いやエリア88世代には、ショッキングなニュースが流れました。

 2017年6月20日(火)、ロシアの各航空機メーカーを傘下に有する国策企業「ユナイテッドエアクラフトコーポレーション(UAC)」のユーリ・スリウザー社長は、同国の戦闘機メーカーを代表する「ミグ(MiG)」と「スホーイ(Sukhoi)」の両社をUACの下で2019年内に合併・統合することを発表しました。

今すぐにミグという名前がなくなるわけではありませんが、ソ連の航空機と言えばミグだったわけで、その名前を持ったミグ社はこれでなくなるわけです。

それで思い出すのは、やはりミグ25事件です。

昭和51年9月6日,ソ連の最新鋭ジェット戦闘機であるミグ25が突如として日本の領空を侵犯し,函館空港に強行着陸した。その後防衛庁は,領空侵犯,強行着陸の背景状況解明のため機体を調査し,11月14日ソ連側に引き渡しを行った。

そして、そのミグ25事件を参考にして作られた原作を映画にした映画「ファイヤーフォックス」です。なお、ミグ25の通称(NATOのコードネーム)はフォックスバットです。

ファイヤーフォックスと言っても、ブラウザーじゃないよ

ある世代にとっては、ファイヤーフォックス(Firefox)と言えばブラウザーを思い出すでしょう。でも、ある世代にとってはファイヤーフォックスといえば、この映画でありミグ31のことなのです(私なんかたぶん4回ぐらい見てます)。

ファイヤーフォックスといえば、B級映画として歴史に名を残しています。

たしかにクリント・イーストウッドがもっともクリント・イーストウッドらしくない役を演じたとも言われています。しかも監督はクリント・イーストウッド本人。

他にも、スターウォーズのおかげでモーションカメラが発明されたから、そのモーションカメラを使ってみたかっただけじゃないか(空中戦のシーンは実際スターウォーズと同じ人が撮影)とか、そらB級映画と言われるのもやむなしではあります。

ただ、風の噂によると航空機でゲームといえばこれしかないと言われるエースコンバット。

そのエースコンバット2の雪の峡谷ミッションはファイヤーフォックスのオマージュということらしいんです。もちろん、風の噂なんですが、あながち嘘でもないと思えるほど、航空機映画としてのファイヤーフォックスというのは、当時ある一定層の人たちのハートを打ちぬいた映画でもあったのです。

航空機がマッハの速さで飛んでいくとソニックブームがそそり立つって演出もこの映画がはじめてかもしれません。

「ロシア語で考えるんだ」というネット用語

ということで、なんだかんだでみんなが大好きな映画ファイヤーフォックス。でも、みんながこの映画を愛してやまないのはほぼラストシーンの有名なセリフにあります。

考えるだけで敵機を迎撃するファイヤーフォックス、クライマックスでクリント・イーストウッドが演じるガントが追いすがるファイヤーフォックス2号機を打ち落とそうと考えてもなにも起きません。

その時にガントの頭の中を流してくるのが「ロシア語で考えるんだ」という言葉です。そうです、ファイヤーフォックスはソ連製ですから、その思考誘導装置もロシア語になっているというわけです。

いや、ロジックはわかりますよ。でもね、この大クライマックスシーンで「ロシア語で考えるんだ」が出てきたときの階段がそこにあると思って空振りした足元のようななにかが空振りする感じ。

まあ、要するにスターウォーズEP4の「フォースを使え」とほぼ同じなんですけど、この「ロシア語で考えるんだ」が映画の文脈を飛び越えて面白いフレーズとして、なんだか今でもネットのそこかしこに言葉として残っているんですよね。

自分の人生に「ロシア語で考えるんだ」という言葉が必要になるタイミングなんかやってくるはずもないのに、そんなタイミングがあることを少しだけ期待してしまうだけの言葉の力があったわけです。

こんな経緯があるので、この映画のあとにブラウザーでファイヤーフォックスという名前を目にしたとき、やっぱりなんか心が躍ってしまったんですよ。このブラウザーもロシア語で考えないとダメなのかなとか?、どうでもいいことを考えてしまうわけです。

でだ。

こういう文脈がなくなって生き続けている言葉って、ネットではけっこうあるはずです。こういうよくわからないけど、耳なじみしているどころか、よくわかってもいないのに普通にネットで使われている言葉、少し深堀していきたいと思ってます。

それにしても、クリント・イーストウッドといえば、やはり山田康雄の声が欲しいですよね。やっぱり、無理なんでしょうか。