古くからのカメラ男子が目をキラキラさせながらフォーカスをあわせちゃうレンズに、大三元レンズというものがあります。これは広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームの3本すべての明るさがF2.8で、いわばロト装備のようなもの。(特に)報道カメラマンが使うことが多かったレンズで、「この3本があれば、どんなシチュエーションでもだいたい撮れる」。そんなつよいレンズなんですね。

アマチュアの方にとってもメリットあり。絞りを開放にすれば前景も背景もボケやすいから、自分の好みの世界観を描けやすいんですよね。

しかし、高い。カメラメーカーの純正品だと、だいたい1本20万円はします。かける3でおいくらになるでしょう? 目を背けたくなる数字になるでしょう? こんなの、おかーちゃんに知られたらどうなるとお思いですか!

だからこそお伝えしたい。90年代くらいの同等スペックのネオクラシックレンズだったら、お安くお手に取れますよって。

ケンコー AT-X 270 AF PROのヤフオク相場は1万円くらい

今回ご紹介したいのは、日本のレンズメーカーの1つ、トキナーが90年代に発売していたAT-X 270 AF PROです。キヤノンEFマウント、ニコンFマウント、ミノルタ(ソニー)Aマウント、ペンタックスKマウント用が用意され、28-70mm F2.8の標準ズームにしては割安な10万円を切る価格でリリースされました。

僕はヤフオクで、フィルター枠が歪んでいるミノルタ用を5000円くらいでゲットしましたが、完動品でもだいたい1万円くらいで落札できるみたい。

さてこのレンズ。F2.8と明るめですが、開放で撮るとえらい癖玉です。「やっべ、まずいもん買ったか」と思う方もいるはず。

α7RII&LA-EA4で撮ってみましたが、きみ、ほんとにピント合わせてる!?ってくらい、ハニーすぎる。げきあま。

うははは。どういうことなの。君のAFはどこを見ているの。

ところが、アンダーめにするとこれがなかなか味わい深い。

輪郭がぶっとい被写体をグッと浮き立たせる解像力はお持ちの様子。そして背景のボケ。玉ねぎボケをそうとは感じさせないくらいになめらかに光を飽和させています。

あー。ふーん。ほー。なるほどなるほど。

コイツはアレだ。RAWで撮って、現像でいろいろやらかしたほうが楽しいレンズだ。アンダーで撮りながらハイキーにまとめちゃうとか。

開放だと合焦している部分がわからないくらいにピントが薄いし、光が外側に逃げていく収差のクセもある。AF時代のレンズですが、MF時代のクセ玉と同じ感じで捉えればいいとみました。

 

Lightroom CCで色収差やパープルフリンジをなくしたりしていたときに気が付きましたが、合焦部の情報量は豊かなんです。ただし白飛びしやすい。だから10年くらい前まで、デジカメダイナミックレンジが低かった時代は「ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!」レンズとして捉えられちゃったんだろうなあ。

なおこのレンズは、シネレンズの名家であるAngenieux(アンジェニュー)のAF28-70mm F2.6のベースモデルになったとのお話もあり。ODMかOEMかはわかりませんが、この逆光耐性のなさが背景の情報量を減らして整理してくれる効果を生んだんじゃないかなあ。

前玉デカいしフィルター系77mmだしメタルボディだし、何がいいたいかっていうとえらく重いし。そして近接撮影が無理だし。使い勝手は悪いのですが、キッチリクッキリなシャープさを求めない方であれば、貴方にとっての大三元レンズになりえる1本だと思いますよ。