私たちが耳にする「KEYAKIZAKA」には2つの意味があります。

1つは紅白歌合戦に2年連続で出場し大きな衝撃を与え、「サイレントマジョリティー」などの楽曲で知られる「欅坂46」(漢字欅)。

そしてもう1つが、今回ご紹介する「けやき坂46」(ひらがなけやき)。欅坂46内に存在する別グループであり、デビュー2年弱にしてすでに武道館単独公演を成功させているというモンスターグループです。

AKBグループに慣れてしまった私は、当初失礼ながら「けやき坂」は「欅坂」の2期生でありアンダーグループだと認識していました。

もしくは、1.5期生のような形で加入した長濱ねるを落ち着かせるための乗り物なのだと、そう思っていたのです。

ソロ曲「乗り遅れたバス」にあるように、先に出てしまったバスを1人追いかけようとした長濱のための乗り物なのだと。

「けやき坂」と「欅坂」を兼任していた長濱ねるは、すぐさまグループ内でも屈指の人気メンバーへと成長を遂げましたが、それと歩を同じくして「けやき坂」も人気グループへの階段を一足飛びに上がって行ったのです。

「けやき坂」の初期メンバーによってまず歌われたのは、2ndシングル「世界には愛しかない」に収録された「ひらがなけやき」でした。

大人しめで朗らか、シンプルなアイドル曲です。

そして、2曲目が3rdシングル「二人セゾン」に収録された飛躍を誓ったかのような力強い楽曲「誰よりも高く跳べ!」でした。

抑圧された若者たちによる反抗、といった雰囲気を持つ欅坂に対して、明るく快活な印象の「ひらがなけやき」ですが、楽曲の内容は現状に満足しない若者を鼓舞し背中を押すものになっています。

ここにおいてはダンスも歌も飛躍的に上達しており、なかにはまだまだ発展途上というべきものもありますが、すでに先輩グループと相並ぶような人気を獲得しつつありました。

4thシングル「不協和音」に収録されている「僕たちは付き合っている」は、表題曲とのギャップが印象的でした。

爽やかでキラキラと輝くこの楽曲で、このあたりから私たちは気づくのです。

楽曲性の高さとダンスのクオリティ、そして若者の閉塞感、煩悶、憤激といった感情を差し立てるかのようなパフォーマンスによってデビュー以来私たちを震撼させてきたのが「漢字欅」。

そして、そのカウンターとして若者が持つ希望、眩しいまでの溌剌たる姿、楽観的とさえ言える底抜けの明るさによって私たちを癒やしてくれるのが、「ひらがなけやき」なのだと。

欅坂によってボコボコに殴られた私の顔面を優しく手当してくれたのが、ひらがなけやきなのだと!

5thシングル「風に吹かれても」に収録された「それでも歩いてる」は、グループを牽引してきた長濱ねるが欅坂46に移籍した後の楽曲。

アイドルの楽曲としては珍しくファンクの要素を打ち出した「風に吹かれても」に対して、「それでも歩いている」は吉田拓郎を彷彿とさせる明るいフォーク調。

かき鳴らされるアコースティック・ギターに乗せられた歌声には、懐かしさを覚える人もいるでしょうし、逆に新鮮さを感じる人もいるかもしれません。

これまでの曲と同様に、「漢字欅」と「ひらがなけやき」の2つが共存していることでグループとして1度に見せられる幅が広げることができるのは他にはない特徴です。

今思うとオーディション段階から、陰と陽ともいうべき大きな差異を生み出せるメンバーを選んでいたのかもしれません。

6thシングル「ガラスを割れ!」では、新たに加入した2期生と1期生で別々の楽曲が収録されています。

一期生による「イマニミテイロ」は、欅坂46のアンダーグループではないのだという攻撃的なまでの意志を感じる一曲。

今までの明るく楽しく幸せそうだった雰囲気とは違い、攻撃的な歌詞と力強い歌声からは特に強い覚悟のようなものを感じました。

絶対的エースである平手友理奈の不在によって急遽、自らの舞台となった日本武道館の3daysライブを大成功させたけやき坂にとって、もう欅坂46のシングルにB面のごとく収録されるだけでは満足できないのだと、私たちは「けやき坂46」というれっきとした別グループなのだと言わんばかりの楽曲。

なお、ひらがなけやき2期生には「半分の記憶」という楽曲が与えられています。

YouTubeにはアップされていませんが、音源公開当初からクールな神曲であるという評価が大勢を締めていました。

印象的なイントロから始まり、全体に通底する疾走感と壮大なスケールを感じるメロディ。はじめて単独で披露する楽曲がこれとは恐れ入りました。

 

もう名実ともに、「ひらがなけやき」は「漢字欅」のアンダーではありません。

もしもまだアンダーだという認識でいるのであれば、速やかに改めるべきでしょう。

今春からは、数々の伝説を築き上げてきた「○○BINGO」枠を継承し、「KEYABINGO!4 ひらがなけやきって何?」がスタート。

また、テレビ東京系ではオードリーをMCに迎え「ひらがな推し」もスタート。

その勢いは2018年、一気に加速していくに違いありません。

 

今一度、言いましょう。

今、アイドル界の頂点に君臨する「KEYAKIZAKA」には2つのグループがあり、「ひらがなけやき」はけっしてアンダーグループではなく、むしろ「漢字欅」をも超越する存在になるかもしれないです。

「欅坂46」同様に、「けやき坂46」という名前もぜひとも覚えておいてください。今年の紅白に出てるかもしれないですよ。マジで。