電車がホームに入ってきます。いつもの山手線のグリーンの車両を期待して目をやると「おや」と、その車体があなたの目を吸い寄せます。車両全体が、公開間近の美術展の作品で埋め尽くされていたり、季節ものの製品の広告になっていたりと、いつもと違う風景が目を楽しませてくれる。
こんな、車両全体を覆うラッピング広告もいまでは珍しくなくなりましたが、それでもいつも目にするたびに新鮮な気持ちになれるところが、この広告媒体のすごさです。
ところで、こうした車両のラッピングはどのように行われているかご存知でしょうか? もちろん、これは塗装ではありません。目を近づけてみないと気づかれないほどに自然ですが、これは約0.09ミリという薄さのなかに、驚異的な機能をもったラッピングフィルムを利用しているのです。
ラッピングフィルムは季節を通しての幅広い気温や、風雨や紫外線といった条件に対しても劣化を起こさずに、剥がれることなく車両に定着していることがなによりも期待されますが、それだけではありません。
ラッピング作業をおこなうためには車両を基地に停車させ、洗浄からフィルムの施工にいたるまでをすばやく行う必要があります。ここに、ラッピングフィルムの隠れた凄さがあるのです。
今回は特別に、大阪モノレール株式会社で行われたラッピング作業を、3M社のご厚意で見学することができましたので、動画と文章でご紹介したいと思います。
ふだん見ることのできない舞台裏と、縁の下の力持ち「3M™ スコッチカル™ フィルム」のすごさをまずは動画で御覧ください。
フィルムとデザイン力、そして現場の力で実現するラッピング車両
今回のラッピング作業は関西エアポート株式会社が、昨年発表された「大阪国際空港」通称伊丹空港の新ロゴをPRするためのものでした。あざやかな赤は旅のワクワクさを、青は安心と快適性を表現した、大阪の未来をイメージした目を引くデザインです。
毎日休むことがない鉄道の世界で、車両をラッピングするには入念な計画が必要です。ときには数か月前から車両のスケジュールを組んで、すばやく作業を行う必要があります。車両基地でも、車体の洗浄と、足場の構築、そしてフィルムの作業を、すべて限られた時間でこなさなくてはいけません。たいていの場合は、次の日には車両は現場にでなければいけないからです。
そこで威力を発揮するのが、3M™ スコッチカル™ フィルムです。
このフィルムのすごいところは、位置合わせをしている段階では低粘着テープのように何度でも付け外しが可能であるのに、圧力をくわえて定着させたあとは6ヶ月から、長くて5年ものあいだ風雨と寒暖に耐えることができる安定性を兼ね備えている点です。
こちらがそのフィルムの現物です。非常に薄い、変わったところのないフィルムに見えますが、その粘着剤も含めて0.09mmの薄さのなかに高度な技術がこめられています。
実は粘着剤の表面にはガラスビーズが並んでおり、そのおかげで位置合わせ段階では剥がれやすい低粘着性を実現しています。
圧力を加えると、このガラスビーズが粘着剤のなかに押し込まれ、粘着剤と車両本体が直接触れるようになり、こうして高い接着性を持つようになります。
フィルムの機能だけではなく、ラッピングをする際にはどの部分を切れ目にすれば位置合わせが楽になり、作業が効率的に行うことができるかといったノウハウも重要になってきます。
フィルムを提供する3Mは依頼主である大阪モノレールや、クライアントなどと調整して、クオリティの高いラッピング車両の制作に携わっているわけです。
動画では、現場の声も収録しましたので、ぜひ後半まで御覧ください。
見えない場所に、3M
今回とても印象に残ったのは、最終的に貼り終わったフィルムそのものを見ても、これが3Mのしごとだということが一切わからない点です。
3M™ スコッチカル™ フィルムのすごさや、フィルムのデザイン、施工の迅速さなどを支える作業員の技術などは、一見しただけではわからないのです。
この上のコック部分の処理をみてください。
フィルムをうえからかぶせたあとで、開閉部が問題なく稼働し、それでいてロゴの「A」の斜めの線が切れることがようにカッターとヘラで繊細な作業を行っています。こうした隠れたこだわりが、ホームに入ってきた車両から新鮮さだけを感じさせる、違和感のない仕上がりを生み出しているのです。
ホームでラッピング車両をみかけたら、ドアをくぐって乗り込む前に、ぜひその表面をみてください。そこに、3Mの技術が隠れているかもしれません。
(謝辞)
今回の取材をとりはからってくださった3M社、動画の撮影を快く許してくださった大阪モノレール株式会社に感謝いたします。