みなさんは、「耳」の健康に注意したことはあるでしょうか?
目や歯の健康、肌の健康、内臓の健康といったように、身体のさまざまな部分に気をつかうことは多いでしょうけれども、耳については意識したことがないというひとも多いのでは。
しかし、突発性難聴などの症状を経験したひとならばわかると思いますが、ほんの少し聴覚のバランスがくずれるだけでも「集中力が保てない」「頭痛が収まらなくなる」といったように、日常生活に支障が生じます。
工場や工事現場などのように大きな騒音が発生する場所で仕事をしているひとならばさらに聴覚障害のリスクは高まります。騒音がもたらす健康リスクは、あまりにありふれているために知られていない分野でもあるのです。
試して発見する3Mシリーズ、今回は前後編で、そんな「耳」の健康を守る製品「耳栓」「イヤーバンド」「イヤーマフ」を販売している3M 安全衛生製品事業部のかたにお話をうかがいました。
実は怖い「騒音性難聴」はどのくらいの騒音で起こる?
「日常のなかにも、難聴の原因になるような騒音は実は多いんですよ」そう語られるのは、3M 安全衛生製品事業部の池田さんです。
そもそも耳はどのようにして音を感じているかというと、外耳道の奥にある鼓膜の先に「蝸牛(かぎゅう)」という器官があり、その有毛細胞が音をキャッチしています。
鼓膜が音を感じていると勘違いしていたひともいるかもしれませんが、鼓膜がドラムの膜のように振動し、その振動を蝸牛の細かい毛が感じ取っているのですね。
この有毛細胞は整然と並んでいて、蝸牛の奥にいくにつれて高い周波数から低い周波数を感じ取るようになっていますが、年齢とともに衰えていきます。また、とりわけ騒音によっても取り返しのつかないダメージをうけることが知られています。
これが、歳を取ると高い音が聞き取れなくなる理由であるとともに、若い頃からヘッドホンで大きな音を常時聞いていると難聴になってしまう原因でもあるのです。
国のガイドラインでは、85dB(デシベル)を超える環境で8時間以上、労働をする場合は必要に応じて防音保護具を着用することが義務付けられているのだそうです。85dBというのは、どのくらいの音なのでしょうか?
代表的な騒音レベルの例をみてみると、80-90dBとされているのが「地下鉄」や「ゲームセンター」のような場所です。さらに音が大きくなると「パチンコ店」「カラオケ」などが含まれるようになります。
「それならば自分は安心」と思ったひともいるかもしれませんが、これはあくまでガイドラインです。日常的な騒音がもたらす影響には聴覚障害以外にも、集中力の低下やイライラなどもありますから油断はできません。
継続した騒音があってうるさく思うようなときには、必要に応じて耳栓などをつかって耳を守ることも大事なのです。
でもこの耳栓の着け方が大問題!なのだと池田さんはおっしゃいます。
これが正しい「耳栓の着け方」
正しく装着しなければ、実は耳栓はほとんど機能しません。それを実演するために登場したのがこちらのソフトウェアとスピーカーとマイクで構成される「E-A-R fit」 というシステムです。
スピーカー音を拾うマイクは測定専用の耳栓にとりつけられており、これで耳栓の外と中に届いたスピーカー音をマイクで測定して比較することによって、どれだけ耳栓が音をカットできたかを測定する機械なのです。
まず最初は、ふだんやっているように耳栓をおしこめて装着してみました。すでに耳から耳栓が飛び出していていかにもダメな印象ですが、自分では見えないものですから、多くの人がこのような装着の仕方をしているそうです。
スピーカーから音を発生させて、耳栓の外と中との差を測定してみるとNRR、つまりノイズ減衰度の数値はたったの7dBです。これでは、耳栓の意味がありません。
そこで、池田さんがみずから耳栓の正しい装着方法を教えてくださいました。「個人差はあるものの、耳栓をいれる外耳道は少しだけ曲がっています。それを考慮にいれるのが、正しい身につけ方です」とのこと。
まず最初に、指先で耳栓をコロコロと押し、細く、耳にさしこみやすい形にします。
次に、装着する側とは反対側の手で、耳を上に引き上げて耳栓を差し込みます。こうすることで外耳道がまっすぐになり、耳栓が途中で詰まらずに奥まで入るのです。
最後に、耳の中で耳栓が膨らみ、密閉感が高まるまで指で押さえておきます。これを両耳でおこないます。
着けたときからすでに音の感覚がまったく違いましたが、測定した結果もこの通り。スピーカーからでている音を22dBもカットしていますので、十分に性能を発揮しているといえます。
耳栓は押し込めてはいけない、細く差し込んでフィットさせるものなのだとおぼえておきましょう。
耳のストレスが大きいのでは? と思った時に使える耳栓、イヤーバンド
今回驚いたのは、耳栓の装着の仕方を間違えるだけでほとんどその効果がなくなってしまうことと、「音がカットされるというのは開放的なまでに心地が良い」という点でした。
たとえば上記のガイドラインでは「ゲームセンター」が耳に影響のあるギリギリの環境として挙げられていましたが、そこまでいかなくても騒音のある店舗などの環境で集中したいときには、こうした製品の助けを借りるのはなんらおかしいことではないのです。
また、大きな発見だったのは「耳栓は外耳道に合ったものを使わなくてはいけない」というポイントです。実は女性などのように外耳道が細くて通常の耳栓だと理想的にフィットしない人向けに「3M™ E-A-R™ イージーフィット™ 耳栓」という、異なる形状のものも発売されています。
また、他のひとからみて「いま耳栓をして作業をしているな」ということがひと目で分かるように、色に特徴があるタイプや、なくさないように紐がついているタイプもあります。
着けたり外したりすることが多い環境では「イヤーバンド」という製品もあります。さまざまな角度で装着して、手軽に扱うことができるので、実は家庭用としても利用されているのです。
さて、ここまで耳栓を中心に紹介してきましたが、このカテゴリの製品には誰が着けても効果を発揮しやすい保護具、「イヤーマフ」も存在します。
後半の記事では「イヤーマフ」の性能と、その意外な活躍シーンについてご紹介していきます。