これは、ちょっと深堀してみないといけないぞ!ということで、この記事では、この「HHKB20周年ユーザーミートアップ」のモデレーターであり、当日の司会もされた小山哲志さんにインタビューをさせていただきました。
結論を先にいってしまうと、このHHKBという製品のすごさとファンとの幸福な関係がつまった見事なイベントだったということです。
いしたに:まず最初にお聞きしたいところでいうと、イベント自体はPFUが発案・企画ということなんでしょうけど、小山さんがモデレーターとしてかかわった経緯など聞かせていただければと思います
小山 哲志:まあ、PFUさんに呼び出されたわけですが(笑)、最初に打ち合わせさせてもらったときにいろんな話をしました。イベントの前提が2つあったんですよ。
いし:おお
小山:実は PFU は昨年11月に関係者向けの HHKB 20周年記念イベントを一度やっていて、もっとエンドユーザが集まる20周年イベントをやりたいと、それがひとつ。もうひとつは、中国で HHKB がすごく売れていて、特にキー配列に対する要望がすごく来ていると。その辺をユーザも含めて一緒に議論したいというのがあったそうです
いし:その中国の話はイベント記事の中でも書かれていましたね
小山:わたしは PFU の方々とは、ブロガーイベントなどで旧知だったわけですが、2年前に LLoT というイベントをやったときに、キーボードに関するセッションをやって、そこでPFUと東プレに出てもらったんですね。それを覚えてくれていたみたいで、今回小山に仕切りをお願いしようという話になったみたいです
いし:なるほど、やっぱりそういう過去の経緯があったわけですね。そして、実際引き受けるとなって、たぶん人が集まるのかってのがとりあえず問題となりますよね。とはいえ、チケットはけっこうすぐに完売してましたね
小山:はい、ありがたいことに。興味ある層に届けば人は来るだろうという自信はあったんですが、届くかどうかは告知チャンネルの問題とか、届いても同日に別のイベントがあるかで集客は変わってくるので、最初はちょっと不安でした
いし:それはよくわかります
小山:当初はネット中継をやるかどうかも未定だったんですが、チケットが早期完売した段階で、ネット中継は絶対やりましょうという話になりました
いし:なるほどなるほど、うれしい悲鳴ですね(笑)で、当日の話の内容は記事などでわかるんですが、会場の雰囲気はどんな感じでした?
小山:会場の雰囲気ですね。それはですね、もう客の反応がすごく良い。ちょっとギャグを放り込んでもメチャメチャ受けてくれますし、質疑応答の時間でも、熱い質問が出るわ出るわ(笑)
いし:20年分の熱量なんですかね
小山:キーボードがテーマのイベントってそんなになかったですもんね
いし:たしかに聞いたことない(笑)。でも、みんな毎日使っているわけだし、そりゃ一家言ある人多いからイベントあってもおかしくなかったはずですね
小山:数年前から Ergodox とか一部では流行ってますし、自作キーボード派の存在も知ってたので、好きな人は一定層いることは分かってました。
今回のイベントは、そのマニア向けキーボードメーカーの一角である PFU が公式に行ったイベントだという点が、単なるユーザーイベントとは違う熱さをもたらしたのかなぁと。
いし:なるほどなるほど、ちゃんとメーカー側がユーザー側に向き合った結果ということですね
小山:PFU さんは昔からその重要性は分かってますしね
いし:あと、イベント記事読んでびっくりしたのが、なんか物販が異常に売れたっていう(笑)、こんなイベントくるんだから、みんなHHKB持ってるだろうにっていう(笑)
小山:そうなんですよ。飛ぶように売れてました。イベント前は誰もそんなに売れるとは思ってなくて、担当の方もも少しだけ持ってけばいいかなとか言ってたんですが、営業の方からどうせだからどかっと持ってけと言われて、大量に持ち込んだら大量に売れたという(笑)
いし:安くないのに(笑)
小山:確かに他ではあり得ない割引率だったので、お得なことはそうなんですが、絶対に雰囲気に飲まれて財布の紐が緩んでたんだろうなと思います
いし:あはは、とても重要ですね
小山:2,000 円の有料イベントだったんですが、全員にTシャツやステッカーが付いて、しかも懇親会にも参加できて、絶対に利益出てないのは丸わかりなわけです
いし:たしかに、会場費だってあるわけですしね
小山:なので、少しでも売上に貢献しようという気分になりがちだったのかも。なんでも PFU イベント物販の売上新記録だったそうです
いし:それはすごい(笑)。でも、こんなにしてもらったんだから、財布もゴーサインだ!っていうのは結局みんな幸せですよね。ファンがいることがわかっている製品っていうのは、やっぱり強いんですねえ
小山:HHKB は元から和田英一先生の個人プロジェクトからはじまったようなものなので、感情移入しやすいですよね
いし:いわゆるメーカーの製品とちょっと違いますもんね
小山:最初からクラウドファンディング的な側面を持っていたとも言えますよね
いし:そうか!あのイベントは20年後の報告会か!そりゃ人もくるし、熱量も高いはずだ
小山:今回のイベントでいろいろ明らかになったんですが、HHKB がまずまず大きく売れているのは、けっこう偶然が影響してるんですね
いし:へー
小山:秋葉原にぷらっとホームというPCショップがなければ、ひょっとすると初代で終わっていたかもしれない
いし:私も何度かお世話になりましたが、すごい店ですからね
小山:なんかUSで販売開始した HHKB Lite を私が個人輸入して、ぷらっとホームの後藤さんに「なんで日本で売らないの」って言ったことが、Lite をぷらっとが仕入れて販売したきっかけだったそうです
いし:なんだ!小山さん、めちゃめちゃキーマンじゃないですか(笑)
小山:すっかり忘れてましたが、じつはそうだったらしい(笑)
いし:でもなあ、成功した製品って、そういうおかしな話必ずあるんですよね。何か、ブレイクしたアイドルの下積み時代の話を聞いているみたいだ(笑)
小山:まさにそんな感じ(笑)
いし:そして、そのブレイクしたアイドルのデビュー20周年記念で開催されたはじめてのファンイベントということでもあるわけですね。そりゃ、盛り上がるわー
小山:HHKB Pro が東プレのキースイッチを使っているのも、富士通高見沢がキーボードの製造を止めたからという事実も判明しましたし
いし:そうそう、あれはびっくりしました
小山:ブログが一般的になる前の時代は、こういう失われた物語がたくさんあったんだろうなと、改めて思った次第です
いし:なるほどなるほど
小山:つまりインターネットすげえなと(笑)
いし:あとはモデレーターとしては、当日のセッションをどうするかというところも大事なポイントですよね
小山:セッションは登壇者がなかなか決まらなくて一時はどうなるかと思いましたが、あの座組が決まった段階でもう勝ったなと思いました(笑)
いし:そこはモデレーター冥利につきますね
小山:夏コミで買った同人誌に HHKB の記事を書いている人を見つけたから、いきなり登壇を持ちかけてみたり、いやほんと苦労しましたけど、イベント仕込みの立場としても、大変うまく行って満足です
いし:お疲れ様でした
小山:次回の話は決まってないので、そこについては何もないです(笑)
インタビュー、いかがだったでしょうか。
キーボードのイベントですから、たしかに写真映えはしないのですが(笑)、その内容がすごく充実して、さらにここまで積み上げてきたものがぐっと結集したいいイベントであったことがよくわかるインタビュー内容だったと思います。
インタビューにあるように、次回HHKBのイベントが開催されるかどうかは決まっていないようですが、これもユーザーの声次第で決まるのかもしれません。