ワンショット全天球カメラの代名詞となったリコーのTHETA(シータ)。

360度の全天球写真を撮ることを「シータする」というくらい……いやそこまで全天球写真はポピュラーではないけど、そんなTHETAの新製品「THETA V」が9月1日に発表されたのにともない、体感&トークライブが開催されました。

THETA Vのファーストインプレッションを中心にどうぞ。まあ簡単にいえば、3倍速くなって4Kです。

そんなわけでTHETA Vのレポートであります。

会場は品川区にある「寺田倉庫」。倉庫を使った様々なイベントが開催される知る人ぞ知る空間の最寄り駅は品川シーサイド。ただ知る人ぞ知る場所でありますから、リコーの方が案内を持って随所に立っておりました。それに従って訪れると、さりげなく入口が。

この中で開催されております。指示に従ってエレベーターを上り、暗い廊下を歩くと、奥に光が!

この奥が会場。
入口には新製品のTHETA VとTHETA Vで撮影した水中の360度4K映像が流れてました。

そもそもTHETAって何?

こちらが会場の様子です。

新製品のTHETA Vで撮影し、その一部を切り出したもの。レタッチなどはほどこしておりません。

THETAというのはひょろっとした細長いスティック状ボディの、前後にそれぞれ「半球」を一度に撮れるカメラがついた全天球カメラです。

シャッターを押すと、前後それぞれの半球を同時に撮影し、その2つをくっつけて全天球(つまり上下前後左右)の写真を撮ることができます。

会場に展示されていた解説を使って簡単に説明しましょう。

まずは現在のTHETA(上の写真)に至るまでのデザインコンセプトモデルから。

今のTHETAは2013年に発売された初代機からずっと同じデザインで来てますが、そこに至るまでの過程があります。

一番気になるのは左奥にある「ペガッサ星人」風のT字型。我々がはじめて目にしたモックアップがこれでした。2013年のcp+で「360度イノベーションカメラ」という形でぽつんと片隅に置かれていたのです。

cp+2013 より。開発途中のモックアップという形で置かれてました

これが最終的に、今のTHETAへ結実したのです。

実はこのTHETA、内部はかなり凝ってます。少し考えてみましょう。細長いボディの前と後ろにレンズがついてます。では肝心のイメージセンサーはどこに?

答えはこちらの「カットモデル」に。

わかりやすいように光の動きを2色の矢印で示してみました。

前後それぞれのレンズにはいった光はプリズムで90度曲げられ、横向きに置かれたイメージセンサーに当たるのです。これを「屈曲光学系」といいます。

この技術を使っているから、こんなに薄いボディに2つのカメラが入るわけです。

そしてイメージセンサーが捉えた信号はメインプロセッサでデジタル画像にされるわけですが、新製品のTHETA Vでは内部の処理を一新し、プロセッサにQualcom社の「Snapdragon」を採用しました。

スマホ好きなら知る、多くのAndroid機に搭載されているプロセッサです。

実は、THETA Vはある意味「Android機」なのです。これにより、無線転送の高速化や省電力化がはかられました。

ユーザーにとって嬉しいのが無線の高速化。

THETAで撮影した静止画の画像はWi-Fi経由でスマートフォンに転送してはじめて見られるのですが、転送速度はぐっと速くなりました。

ストップウォッチで前モデルのTHETA Sと比べて見たところ、撮影→画像処理→スマートフォンへの転送の一連の作業にかかる時間が「3倍速く」なってました。待ち時間のイライラ解消です。3倍速ければ、撮影して写りをチェックして、うまくなければ撮り直し、ってことも3倍の速さでできるわけです。

画素数はTHETA S/SCと同じですが、画像処理を見直すことで画質もあがりました。リコーによれば画像処理がコンデジレベルから一眼レフレベルになったということです。画質がどのくらい向上したかはあれこれ試してみないとわかりませんが、ちなみに、カバー写真の背景はTHETA Vで撮ったものです。けっこうきれいに撮れております。

ちなみに、撮った全天球映像はこんな感じ。自撮り棒にTHETA Vを装着し、少し高い位置から全体を俯瞰するように撮影しました。会場の雰囲気がよりわかるかと思います。一発でその場全体を感じ取れるのがTHETAの楽しさ。

RICOH THETA V 体験イベントにて #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

THETA VのサイズはTHETA SCと同じ。THETA Sより少し幅広くなってます。別途2台並べて撮影した写真をどうぞ。

左がTHETA S、右がTHETA Vです。

左がTHETAS。右が新製品のTHETA V

THETA Vの3つの進化

ギーク的には「Androidベースになった!」「3倍速くなった!」あたりが大きなネタかと思いますが、機能的な進化点は3つ。

ひとつはBluetoothの搭載。Bluetoothでスマートフォンとさっと接続し、すばやくスマートフォンからシャッターを切れます。Wi-Fi接続に比べて手早く撮影できるので非常に便利です。Bluetooth+Wi-Fiでより撮影環境がよくなりました。

ふたつめは動画。THETAが発売された当初は全天球パノラマの静止画というだけで感動的でありましたが、やがてVRが一般的になり、VRの素材として使える全天球動画へのニーズが高まってきました。

そしてTHETA Vはこのサイズのまま4K動画に対応したのです。解像度が高くなったので、VR時の臨場感も高まりました。

4K動画化のみならず、音声も強化。内蔵のマイクも4個に増やして「空間音声記録」に対応し、より臨場感のあるサウンドを実現してます。内蔵マイクでは音質に限界があるということで、専用の別売りマイクも用意されます。

THETA V用マイク。真下につけるので映り込まないのがポイント。。

会場では空間音声体験コーナーもあり、ゴーグルとヘッドホンを付け、音が本当に鳴っている方向から聞こえるという体験ができます。

映像と音の両面でVRを味わえるというわけです。

ただし、THETA Vで撮影した4K動画をWi-Fiでスマートフォンに転送するときに制限があり、もっぱらスマートフォン側の制限なのですが、4K動画を転送できない組み合わせがあります。その場合はフルHDでの転送になります。これは残念な点。

みっつめは、リモート再生機能。

miracast対応の機器を経由して、THETA V内の映像をテレビに映し、THETA Vをリモコンとしてリモート再生ができるという面白い機能です。THETA Vと対応する機器があればその場で撮った画像をテレビで楽しめるのです。

今のところ動作する機器が限られているとはいえ、これは面白い機能でした。

THETAは真面目に未来を観てる

 会場では別途ステージでトークライブが行われたり、THETA体験用の小さなブースが用意されていたり、

トークライブ会場への通路には今までTHETA写真展で展示されたTHETAを使った写真家による作品も展示され、THETA初心者から新THETAの技術的な詳細を知りたい人、新機能を知りたい人まで幅広く楽しめるお披露目イベントでありました。

ちなみにわたしの作品も3点飾られてました

で、THETA Vってどうなの?

静止画を中心に使ってきた従来のTHETAユーザーには、画質の向上と3倍速い処理能力とBluetooth搭載がトピック。これは素晴らしいカメラです。より快適に使いまくれます。

動画を撮影してVRを楽しみたい人には素晴らしいカメラです。4KのVR動画を編集してシェアするにはパソコンの力を借りる必要がありそうですが、空間音声+4K動画で迫力のあるVRコンテンツをもっとも低コストで手軽に作れる環境が現れた、というのは大きなトピックです。

未来が好きな人、開発能力がある人はもうたまらないおもちゃです。将来のアップデートで、THETA V用のプラグインを開発できる予定です(Androidの開発環境があれば作れるそうな)。

そこには未来も詰まっているのです。