「Omoidoriを写真スキャン専用にしちゃうのはもったいない党」党首の荻窪圭です。
だってあれ、スキャンサイズこそ制限されるけど、世界で一番簡単に失敗なくドキュメントをスキャンできるアイテムなんです。写真のデジタル化だけじゃなくて、もっと上手に使わないともったいないじゃないですか。
で、わたしは何の為に何をOmoidoriしているのか、それはこの先をどうぞ。
Omoidoriといえば古いプリント写真をiPhoneを使って簡単にデジタル化しよう、アナログ時代の写真をデジタルの時代に受け継ごう、いうアイテムなのですが、ひととおり古い写真をデジタル化したあとにどうするか。
考えてみたら、スキャンする対象は写真じゃなくてもいいんです。
文庫よりちょっと小さいくらい(2回スキャンして合成する機能を使えば新書サイズまでいける)の平らなものなら何でもよいわけです。
さてここで唐突かついきなりの宣伝で恐縮ですが、2017年6月にこんな本を出しました。「古地図と地形図で楽しむ 東京の神社」(光文社知恵の森文庫)です。
東京にあるいろんな神社を紹介する本なのですが、御利益とか御朱印とかパワースポットとか無視して、ひたすらその神社はなぜそこにあるのか、いつ誰がそこに建立したのか、そこは昔どういう場所だったのかを追求してます。
けっこうマニアックですが、神社ってそこが一番面白いんですよ。ただ案内に従って神社を訪問するんじゃなくて、その神社のある地形や昔の様子を思い浮かべながら、できるだけ当時の道筋で向かうことで3倍は味わい深くなります。
実はこの本を作るのにOmoidoriが活躍しているのです。
たとえば60ページ。神楽坂周辺の江戸時代の地図(赤く囲ってある方)がそうです。
この江戸期の地図は「寛永江戸全図」といいまして、寛永の頃……その頃の将軍は第3代の徳川家光、つまり江戸時代の初期です。この頃の地図はほとんど残っていないためとても貴重なのです。その上、ディテールまでかなり描き込まれているので現代人がみても楽しめます。
その地図の仮撮影版を、之潮という会社が250部限定で発行しまして、そのうちのひとつを買い求めたのです。安い買い物ではなかったけど、その後の活躍を考えれば買わない手はなかったといって過言ではありません。
でもでかい。一辺が1m以上ある大きな地図の一部分だけを使いたい。大きすぎて普通のスキャナにはかけられませんし、折ったり切ったりもしたくありません。
そこでOmoidoriの出番なのです。
Omoidoriを地図上において必要な箇所だけ撮影するのです。地図が丸まらないよう四隅に重いものを置いて撮影開始。
このときは、2L判サイズにしてちょっと広めに撮影しました。2L判サイズで撮るときは左右2回撮影する必要がありますが、手で動かすとずれが生じるので、ガイドとなるものを手前に置くのがコツ。
ちょうど手元にあったので、PFUのScansnapをガイドにしちゃいましたすみません。
古地図(に限らず大きなドキュメントの一部)をスキャンするときはこういう設定で。トリミングや赤目補正はオフに。
実に簡単。
Omoidoriを知らない方に説明しますと、OmoidoriにかちゃっとiPhoneをハメ込み(写真はiPhone 6sですが現在発売されているomoidoriはiPhone7にも対応してます)、かぱっと開き、Omoidoriアプリを起動するだけです。
画面を見ながら位置を合わせ、スキャンボタンをタップするだけでOkです。撮影した画像はカメラロールにはいります。
最終的にパソコン上で作業をするわけですが、その転送も簡単。iCloudフォトライブラリを使っていれば、自動的にクラウドに上がるので全自動です。
パソコン側がMacなら、AirDrop機能を使って必要な画像だけパソコンにワイヤレスで転送してもOkです。
あるいは、dropboxなどのクラウドにアップロードする、Evernoteに貼り付けるのもいいでしょう。
このように転送した画像に、パソコン上で必要に応じてトリミングし、線や文字を入れ、書籍で使ったわけです。画質的には800万画素程度あるので、A5サイズくらいの本でも大丈夫です。
わたしは「東京古道散歩」(新潮講座)などの歴史散歩講座の講師もやっておりますが、そのときの配布資料を作るときもよく使ってます。
面白いことに、地図の中で本当に必要な箇所のみを抽出しようとすると、L判から2L判の大きさが一番いいのです。一瞥していい感じに把握できるサイズなのでしょう。
集めた古地図の一部をOmoidoriして、ブログで使ったり、FBで同好の士と楽しんだりもしております。
たとえばこれ、昭和16年に発行された「コンサイス東京地図」(東京の区分地図)から新宿駅まわりをスキャンしたものです。
新宿-高田馬場間というほどよいエリアがちょうどL判におさまってくれました。
今の東京を知る人が見ると面白いポイントがいくつもあるのですが(京王線の新宿駅が新宿三丁目にあるとか)、この時代の地図で注目すべきは「戦時改描」でしょう。
新宿駅の西口にあやしい一角があります。これ、淀橋浄水場なのですが、浄水場だとわからないようにわざと荒れ地にしてます。
何しろ昭和16年といえば、第二次世界大戦。敵国に重要な施設がバレないようにしているのですね。これが戦時改描です。まあ、バレバレといえばバレバレなんですが、正確な地図の出版もできなかった時代があったということですね。
戦時改描は極端としても、東京のように時代に合わせて変化し続ける都市の古い地図は現在と比べるだけでも実に楽しめます。
ちなみに地図の著作権は発行から50年で消滅しますから、昭和40年より前のものならスキャンして公開しても問題ありません。
わたしはたまたま古地図収集という趣味を持っていたのでこうして楽しんでおりますが、そうじゃなくてもちょっとした画像やドキュメントをOmoidoriでスクラップして整理するのはお勧め。